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とんかつの衣は「ウェブ向き」なんです

――作画に関してですが、とんかつの質感をきちんと再現して描くのはなかなか難しいと思っています。そのあたりでのご苦労などはありましたか。

小山:実はまったく苦労はしていないんです。スクリーントーンでやるとうまくいかないな、というのはなんとなくわかっていました。それに最初はひとりで描いていたので、トーンを貼るのは労力的にも不可能だったんです。そこで料理のイラストなどを見てみると揚げ物の絵は筆で着彩しているものが多く、ペンで似たようなやり方をすればいけるかもしれない、と思いつきました。ただ紙のジャンプは印刷があまりよくなくて、チョチョッとつけたムラが潰れて見えなくなってしまうため、このやり方はできないんです。その点、この作品は『少年ジャンプ+』というデジタル媒体での連載だったのがよかったですね。

イ:あとあと考えると、紙よりウェブでやってよかったと思うことがいくつかあるんですが、とんかつの衣が案外デジタル向きだったこともそのひとつです。

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製粉業界のウェブサイトから拾ってきた「剣立ち」という言葉

――ところでこのマンガには「油裂音」「とんかつ師」などの独特の用語がありますよね。

小山:「油裂音」はイーピャオがノリで作った言葉です(笑)。

イ:この言葉が出回るのはちょっと恥ずかしいんですよ。アニメになったときに声優さんが自作の言葉を言ってるのが、もう恥ずかしくて。

小山:でも違和感のない日本語だと思いますよ。

イ:この油裂音という言葉の初出は、とんかつ愛好者のグループが揚太郎のDJを聞きに来たときに、とんかつの揚がるプチプチ音を聞いて、あ、油裂音だ! となるシーンです。いかにも専門用語っぽい、愛好家たちの中のフレーズになっている感じを出したくて作りました。「とんかつ師」は、いつの間にか自然に使っていました。

小山:最近、コント師とか言いますよね。そんな言葉は本来はないのですが、たぶんそういうものの影響で、わりと自然に出てきましたね。ほかにも「とんかつ道」という単語もよく使われています。これは藤子不二雄先生の『まんが道』の影響でできた単語だった気がしますね。

イ:これは実際に使われる用語らしいですが、「剣立ち」というのも作中に出したかな。製粉業界のウェブサイトを見ていたときに拾ってきた言葉ですが、製粉業界では衣が剣の刃のように立っているように揚がることを剣立ちがいい、と言うらしいんです。