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「二十歳すぎると時の流れがほんと早いから」 朝日、読売、産経、東京の成人式社説はどう“激励”した?

「おじさんはすでに成人している」という謎の絶対優位

2020/01/17

genre : ニュース, 社会

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絶妙な「元高校教師(80歳)」の読者投稿

 毎日新聞の社説は成人の日についてふれていなかった。しかし!

 社説のすぐ隣に配置されていた読者投稿が輝いていたのだ。そのタイトルは、

「青年よ、スマホから離れよ」(元高校教師 80歳)

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 待ってました元高校教師師匠!

 師匠によれば毎朝の散歩の途中に「異様な光景」を見かけるという。それは高校の送迎バスの風景。

《誰一人としておしゃべりもせず、ただただスマホに熱中する様子は気味が悪くなるほどです。》

《朝のあいさつや家での出来事など話のタネはいっぱいあるはずです。彼らが社会に出て、他人と話ができなくなるのではないかと危惧します。》

 締めは、

《かのクラーク博士は「少年よ、大志を抱け」と呼びかけました。今はこう言いたくなります。「青年よ、スマホから離れよ」》

 決まった! こういうのが読みたかった。

 でも師匠、今は大人だってバスや電車の中でスマホですよ。私も電車ではスマホやiPadで新聞を読んでます。ラジオ番組も聴けます。受験勉強だってできるだろう。充実した時間の過ごし方だと思いますが「異様な光景」でどうもすいませんでした。

©iStock.com

 しかし自分では小言を言わずにこの投稿を社説の隣に配置する毎日新聞の絶妙なやり方! こういう手があったか。来年も注目です。

読売師匠が「不安を抱えている若者」に語ったこと

 続いては読売新聞。

「社説 成人の日 挑戦する気持ちを忘れずに」

 書き出しは《成人の日のきょう、122万人が大人の仲間入りをした。新たな門出を祝いたい。大人としての自覚を胸に刻み、人生を歩んでほしい。》

 ああ、いい感じ。期待できそう。

 読売師匠は「将来に希望を持っている」とした若者の割合が日本は他国に比べて低いとし、

《年金給付など社会保障制度の持続性や、仕事と子育ての両立などについて、漠然とした不安を抱えている若者が多いのだろう。》

 と分析する。

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 この流れから社会保障制度についてツッコむのかと思いきや、

《「支払った保険料と期間に応じて年金を受け取れる」という年金の基礎を知っている割合は、18~24歳では他の世代に比べて、著しく低いという調査結果がある。》

 というデータを出し、

 《基本知識を持っていないことが不安を助長しているのではないか。》

 まったく逆だった。

「漠然とした不安」を抱える若者は年金のシステムをよく知らないからではないか、という小言になったのだ。

《まず、税や社会保障といった、生活する上で必要な知識を学ぶことから始めてはどうだろう。》と続けた読売師匠。

 私は税や社会保障の記事を読むと不安になってしまうのだが、私も確実に叱られそう。