平成の天皇 即位直後、退位直前に北海道へ
これは平成でも継続していたように思われる。平成の天皇と皇后は即位直後の1989年9月、第44回国民体育大会秋季大会開会式に出席するため、北海道を訪問することになった。北海道は即位して3つ目の地方訪問で、東京からまず稚内へ入り、翌日に稚内から飛行機で千歳へ向かい札幌に到着、国民体育大会開会式に出席、競技を観戦しており、訪問場所は稚内と札幌の周辺に限られている。国民体育大会開会式に出席するために札幌を訪問する必要のあった天皇皇后は、その前にわざわざ稚内へ立ち寄ったのである。稚内では、昭和天皇が訪問時に詠んだ「御製」を刻んだ記念碑を訪れた。それは、父親から天皇の位を引き継いだ平成の天皇が、この国をも引き継いだことを意味しているのではないか(河西秀哉・瀬畑源・森暢平編著『〈地域〉から見える天皇制』吉田書店、2019年)。
平成の天皇と皇后の旅は、「国民と苦楽を共にする」という精神から、被災地訪問を数多くしており、被災者との会話に代表されるその風景はいわゆる「平成流」とも称される。一方で、離島への訪問も数多く行っている。平成の天皇は退位を控えた2018年8月、最後の離島訪問として、北海道北部の利尻島を訪問している。このときの訪問は、札幌で開催される北海道150年記念式典に出席することが主な目的で、利尻島の訪問は空路で日帰りであった。それには、天皇の最後の国見としての意味があったのではないだろうか。
雅子皇后が被災者の目をじっと見ながら
令和の天皇と皇后の旅は、今のところは、即位に伴うもの、四大行幸啓と呼ばれるもの、そして被災地訪問のみである。被災地訪問では、雅子皇后が被災者の目をじっと見ながら話を聞く場面が印象に残った。いわゆる「平成流」を引き継ぐ視点であろう。今後、天皇の旅はどのように変化していくのだろうか。