意識改革こそ日本企業最大の課題
情報とはどこかから自動的に入ってくるものではなく、自ら必要な情報源を開拓し、集めた情報を分析・評価するという一連の作業を経て、やっと物事を判断するために使える「インテリジェンス」ができる。これは各企業が、自社のニーズに応じてそれぞれ能動的に構築しなければならず、受動的に待っていても誰も与えてくれはしない。
この一連のプロセスを全て欧米のセキュリティ会社に丸投げするのであれば、がっぽりと手数料をとられるから高くなるのは当然。しかもよく事情がわからないまま丸投げし、本当に欲しいと思っている自分たちの「ニーズ」を明確に伝えていないため、提供される情報にも不満。だから「高いだけ」と感じてしまう。
実際の物理的な警備においても同じようなことが言える。警備ポスト毎の人員の業務内容を明確にして、それがしっかりと履行されているかを監督する仕組みができていなければ、現場の警備員や警察は働かない。日本の優秀な警備会社とは違い、こちらからうるさく言わなくても警備会社自身でしっかりと管理してくれるようなことは、途上国ではまずあり得ない。そもそも警備員にしても治安機関の要員にしても、しっかりとした教育もできていないのが普通であり、適切な管理・監督ができていなければ働かないのは、途上国では常識でさえある。
そうしたことを前提にしながら、セキュリティ体制が機能するように動かしていくには、詳細なオペレーション計画と管理体制の構築が必要であり、そうしたことに日本企業自身が能動的に関与しなければ、セキュリティ会社に丸投げをしただけでは満足な警備など受けられない。
「これをすれば万全」といった魔法のような対策があるわけではない。常にリスクは存在し、100%のセキュリティなどあり得ない。様々な既存のリスク軽減策が確実に機能するように日々その精度を高めていくしかないのだ。そのためには、自社の事業に対する脅威は何かを特定し、その脅威に対する対策としてどのようなものがあるのか、そのセキュリティ対策を履行する上でどのような管理が必要なのか、日々の脅威情報をどのように収集・分析すればいいのか、万が一既存の警備が破られたら自社の社員たちにどのように危険情報を知らせ、どこに避難させるのか等々を、自ら考え自らセキュリティ体制をつくって維持・管理する以外にない。
こう考えていくと、企業の中で危機管理やセキュリティに通じた人材を養成し、自分たちの安全は自分たちで守るという意識を高めていくしかない。「自力でやる」……、そのマインドを社員一人ひとりに根付かせることが、日本企業にとっての最大の課題だと言える。