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——負の連鎖がおきて貧困から抜け出せなくなる構造の一端がわかりましたが、それ以外にも歴史的背景として押さえておくべき点はあるでしょうか? 

貴堂 構造的な差別の起源をさかのぼれば、長い奴隷制下の苦難にまでたち戻らなければいけません。

 本人の意思に反して強制的に連れてこられ、商品として売買され、幾世代にもわたって強制労働に従事させられ、性的にも搾取された。結婚する権利も家族を持つ権利も保障されず、読み書きを学ぶことも禁じられた。そうした南北戦争終結までの約250年もの労苦も、制度的差別の土台をなしています。 

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 アメリカはよく「移民の国」として語られます。自由や平等といった米国の理念に惹きつけられ、世界中の移民が機会の平等を求めてやってきた歴史がそこでは語られます。しかし、その「移民の国」の語りが、もう一つのアメリカ史である「黒人差別の歴史」をみえなくしてきたことに私たちは自覚的であるべきです。 

「放浪」「徘徊」などの微罪で…‥囚人労働の暗い歴史

——話を現代にいまいちど戻しますが、警察の捜査や、刑事司法の場にも「制度的差別」が存在するそうですね。 

貴堂 これはNetflixのドキュメンタリー『13th 憲法修正第13条』によくまとまっているので、ぜひ見てほしいのですが、米国の刑事司法に深く根を下ろした差別的慣行を見逃すことはできません。

Netflixドキュメンタリー『13th 憲法修正第13条』はYoutubeで全編無料公開中(日本語字幕付き)


 そもそも、アメリカ南部の警察組織の原型は、奴隷の逃亡や反乱への抑止力として組織された奴隷パトロールなんです。 

 南北戦争後は、奴隷制度の解体により経済が混乱しますが、すると警察は「放浪」「徘徊」などの微罪で黒人を逮捕し、彼ら囚人労働を使って道路建設などのインフラ整備を行いました。その過程で、黒人には「犯罪者」「危険」「暴力的」などのレッテルが貼られていきます。 

 アメリカの警察組織は、その後も白人のための「秩序維持」の活動とともに発展してきたのであり、いまもその伝統を断ち切れていないのだと思います。   

受刑者数は1972年の約30万人から2014年の約230万人へ

——こうした場での「制度的差別」は、現在でも引き継がれているのでしょうか。 

貴堂 そう思います。というのも、米国の刑務所制度はここ50年で大量収監の方向に進んでいきましたが、その煽りをもっとも受けたのは黒人をはじめとする有色人種だからです。 

 ニクソン政権からレーガン政権にかけて、軽微な麻薬犯罪の取り締まりが強化されました。その後も取り締まり強化は続き、米国全土の受刑者数は1972年の約30万人から、2014年には約230万人にまで増えています。 

 その間、前述の黒人居住区を対象にした人種プロファイリング(*)が実施され、逮捕された黒人は罪状に見合わない重刑を負い、人種間の負担が不均衡な政策や制度、法律がたくさんできました。

*……警察が故意に特定の人種に対象を絞って捜査を行うこと。