今年8月より、日本初となる小型飛行機の会員制チャーターを活用した総合旅行サービスが始まった。提供するのは「スカイトレック」。昨年6月に設立されたばかりのベンチャーだ。このサービス、果たして成功するのだろうか? 37歳にして同社の代表取締役社長を務める永堀敬太氏を訪ねた。
◆ ◆ ◆
日本の移動と観光に、新たな選択肢が加わった。「カジュアルラグジュアリー」をコンセプトにするスカイトレックが提供するのは、小型飛行機とヘリコプターのチャーターをメインに使用した会員制の旅行会社。日本全国100箇所の空港やヘリポートを結んで、オーダーメイドの空の旅を実現した。
利用方法は、とてもシンプル。iPhoneの専用アプリで出発地と目的地、日程を入力して、表示された旅のプランをタップするだけ。操作性は、電車の乗換案内やカーナビとほとんど変わらない。もちろん、メール、電話での予約も可能だ。
スカイトレックはほかにも大手エアラインの航空券や宿泊先の手配、自宅から空港、空港から宿泊先までのハイヤーサービス、レンタカーやレストランの予約、現地でのアクティビティの提案まで、旅と移動にまつわるあらゆるサポートを展開している。
同社はビジネスとプライベート、どちらの利用も想定しており、例えば六本木のアークヒルズから成田空港までヘリコプターを使って20分程度で移動して大手エアラインに乗り換えたり、これまで足を延ばすのが億劫だった離島をホッピングすることもできるようになった。
入会金は個人で1000万円、法人で1500万円
これだけのサービス、利用したいという人も多いだろうが、その価格は日本では珍しく超高額だ。入会金は法人で1500万円、個人で1000万円。別途必要な年会費やチャーター料金を加えると、一般人にはまったく手が届かない料金設定になっている。
ターゲットを富裕層メインに絞ったこのサービスは、どのようにして生まれたのだろうか。スカイトレック代表取締役社長の永堀敬太氏は、こう振り返る。
「弊社の母体は広島で100年以上、造船海運業を手掛けてきたグループで、いち早く生産の現場を海外に移したことで世界でもトップ10に入る地位を築きました。一方でオーナーには地元への想いもあり、地域に根差した形で新しいビジネスと雇用を生み出そうと考えたんだと思います。6年前に町おこしの会社、せとうちホールディングスを作り、尾道でサイクリスト向けホテルを開いたり、デニム事業など地域の特徴を活かしたビジネスを始めていました。そうしてまちを活性化するアイデアのひとつとして、瀬戸内海で水上飛行機を飛ばしたら面白いんじゃないかという話が出たのがこの事業のきっかけです」
もともとは、大卒後に入社したイー・アクセス(当時)を経て都銀で働いていた永堀氏。2年ほど前、せとうちホールディングスを通して様々な町おこし事業を構想していたオーナーと出会い、「うちに来ないか」と誘われて、スカイトレックの事業に携るようになった。
その当時、既にせとうちホールディングスはアメリカの小型飛行機メーカーを買収しており、オーナーからチャーターサービスのアイデアを聞いて驚いたと苦笑する。