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じつはあいまいな殺菌、除菌、抗菌

 殺菌は、微生物を死滅させることですが、滅菌の「微生物を完全に死滅させること」の「完全に」という条件がありません。どの程度まで微生物を死滅させるかということがあいまいです。とにかく微生物を減らせればよいという感じです。

 除菌は、対象物から微生物を除いて減らすことです。必ずしも病原体を死滅させるわけではありません。手を水で洗うことから、ろ過などにより微生物を取り除くことも除菌に含まれます。

 抗菌は、製品の表面で微生物を長時間増やさないようにすること、つまり微生物の増殖を抑えるということです。製品の表面以外の微生物についての作用はほとんどありません。

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 こうして「○菌」などを見てくると、滅菌と消毒は医療で定義がはっきりしていますが、殺菌、除菌、抗菌はあいまい度合が高いことがわかるでしょう。

抗菌グッズがいいとは限らない

 抗菌グッズとは、製品に消毒剤や抗菌作用のある物質を混ぜて弱い殺菌能力をもたせたものです。一口に抗菌グッズと言っても、多くの種類があり、その効果もさまざまです。樹脂などに成分を練り込んだもの、布にその成分を用いたもの、スプレーなどの噴霧タイプのものなど、多岐にわたっています。

 台所用品や、浴室用品などに抗菌作用をもたせることにより、掃除の手間を減らすことが期待できます。これらのものは、微生物の繁殖を抑えることにより、臭いを防ぐなどの効果が期待できます。衣類に抗菌作用をもたせたものなら、汗をかいた後などの臭いの原因になる細菌の繁殖を防ぐことが期待できます。

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 その一方で、抗菌グッズの作用によっては、私たちと共生している常在菌のバランスを崩して、かえって病原菌の侵入を許してしまう危険性があります。さらに、中途半端な殺菌は、その抗菌作用に対して、病原菌が耐性をもってしまうことがあります。それにより抗生物質などが効きにくくなることが考えられます。

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