個人主義的で結束力が弱く、一体感がないように見える
石井 『女帝』でも、そのくだりを書きましたが、未だになんだったのか、わからないままで、ずっと気になっています。民進党がなくなってしまい、党として検証できなくなってしまったのかもしれませんが、蓋をして、忘れようとしているように見えます。過去をきちんと検証しないと未来もないと思うのですが。
大島 さらに悪いことには野党はみんな「俺が俺が」になってしまう。立憲民主と国民民主という、あれしきの小さな権力争いの中でも、お互いが意地を張ってしまうじゃないですか。その内ゲバ体質の系譜は前原さんから、いやその前の民主党時代からずっと続いているんだと思います。
石井 政党を頼らずに自分の力で頑張ってきた、と自負する人が多いのでしょうか。個人主義的で結束力が弱く、一体感がないように見える。
大島 小川さんが悩んで言っていた言葉を思い出しますよ。「若い頃、国会で自分なりにいい質問ができたなって思ったときに、褒めてくれるのは常に自民党の偉い先生だった。民主党の先輩方は特に反応してくれない」って。
政治家の日常を「虫の眼の視点」で垣間見ることができる作品
石井 リベラルでみんな平等との理念を掲げているけれど、なんだか幹部だけがいつも目立っているような感じがして。下にいる人をしっかりと育て支えるシステムがないと、集団として強くなれないのではないでしょうか。
大島 自民党のような保守政党は、基本的に社会の構造が原状維持されるところに重きを置く集団ですから、多少意見が違っても、権力を維持していればオッケーなんですよ。ところが野党の政治家たちは、何かを変えようと思って政治を志した人たちなので、それぞれの理想像があるから我も強い。だから小さな差異を許せず、譲り合えない。リベラルとか、改革、革命を求める人たちの、これはもう性ですね。
石井 それにしても、大島さんの映画を観て思ったのは、政治家の日常を「虫の眼の視点」で垣間見ることのできる、貴重な作品であるということでした。17年という時間をかけて少しずつ信頼を醸成したからこそ、細部まで撮影できたんだと思うんです。議員宿舎の洗濯物だらけで冷蔵庫が空っぽな生活ぶりとか、選挙に戸惑っていた奥さんが次第に裏方として存在感を出していく過程や、お嬢さんたちの成長ぶり、小川さんのご両親が選挙事務所で地元の人に電話をかけ続ける様子……。政治ドキュメンタリーの中でも、あまりこういった描き方をしたものはないんじゃないかと感じました。