STAP細胞事件で小保方晴子さんが世間に名を知られてから、早6年の月日が経った。このSTAP細胞事件をモチーフに『モテ薬』という小説を書いたのは、「ストロベリーナイト」の脚本で知られる旺季志ずかさんだ。「リケジョ」の星だった小保方さんになぜひかれたのか、取材を通して感じた「男社会」について、旺季さんが綴った。
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「小保方晴子」――その名を知らない人はいないだろう。彼女がこの世にあらわれたとき、私はなぜか強烈に惹かれた。
2014年に世界中を驚かせた「STAP細胞事件」。小保方晴子さんは、山中伸弥さんのiPS細胞を凌ぐノーベル賞級の新発見をした科学者として、彗星のごとくあらわれた。一時は、割烹着姿の彼女の姿をメディアで見ない日はないほどで、「リケジョ」という言葉が世間を賑わせた。が、それも束の間、研究不正の疑いが噂されるようになり、結局、『ネイチャー』に投稿された論文は撤回、最終的に不祥事の責任を取るようなかたちで小保方さんは退職を余儀なくされた。
彼女はすべてを失ったのではなかったか?
そして、数年後、女性写真の巨匠・篠山紀信の被写体となって『週刊文春』のグラビアを飾ったとき、驚愕した。あれほどの大きな事件があったのにもかかわらず、何事もなかったかのように、まるで女優のような微笑を浮かべている。
彼女はすべてを失ったのではなかったか――?
しかし彼女はたしかに、そこにいて、美しい姿で生きている。それも世間の日陰にこっそり隠れるのではなく、しっかりと背筋を伸ばし、私はここにいる、と表舞台に胸を張っている……。
当の事件は違和感が残る幕切れだった。いや、本当に「STAP細胞事件」に終止符は打たれたのか?
若く美しい女性研究者、「リケジョの星」があらわれたと思ったら、いきなり、世間から「捏造の科学者」と呼ばれるまでになってしまった。すべてが小保方晴子さんのせいになって、理研の研究環境や、ヒト・モノ・カネにまつわる組織的な問題にはいっさいメスが入らなかった。
どうしても真相が知りたい。彼女への興味が、事件の取材をして脚本家としてなにか書いてみたいという情熱となった。