「コロナ禍以降、全国の病院はボクシングでいえばノックアウト寸前の状態が続いています。緊急事態宣言が出された頃はまさに『カウント9』。第二波も収束に向かいつつあり、最悪の状況は脱しつつありますが、まだまだグロッキーであることに変わりはありません」

 こう危機感をあらわにするのは、2500の病院が加盟する国内最大の病院団体、日本病院会の相澤孝夫会長だ。相澤会長は長野県松本市にある相澤病院の理事長も務める。理事長就任時、相澤病院は倒産の危機に瀕していたが、24時間365日の救急患者受け入れなど、徹底した経営改革を断行して黒字化を実現。「病院の改革者」としても知られる。未曾有の危機に直面した病院をどう改革していくのか。

相澤孝夫氏(日本病院会会長)

2040年、病院が半分に

 相澤会長は「コロナ以前から病院の経営は極めて厳しかった」と指摘する。

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「2018年度から2019年度にかけて2期連続で赤字となった病院は4分の1を占め、医療機関の倒産はここ10年で最多となりました。追い打ちをかけるようにコロナというパンチが飛んできたのです。

 日本病院会を含む病院3団体が全国1400余りの病院から回答を得た調査では、4月から6月にかけて全体の6割以上が赤字になったことがわかりました。なかでもコロナ患者を受け入れたところは8割超が赤字。いま、7月から9月の数字を取りまとめているところですが、速報値を見る限り、まだまだ赤字は続いています」

 

 医療崩壊を防ぐためにもコロナによる大規模な倒産は防がなければならない一方で、今後、病院が減っていくことについては、「長い目で見れば避けられないことだと考えています」と言う。

「1990年代中盤から、外来・入院患者は減少傾向です。今後、人口減少社会を迎える日本では、さらに患者さんが減っていく。こうした中で病院の数が減っていくのは当然のことです」

 診療所やクリニックなど様々な医療機関が存在するが、医療法でいう「病院」とは、20床以上のベッドを持つ医療機関のことを指す。相澤会長は、2040年にはいまの半分となる4000の病院があれば十分に医療体制を維持できるという。