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「大人向けの絵本はたくさんありますし、子ども向けのものもある。子ども向けというかノーターゲットですね。あえて子ども向けに書いているわけではないんだけれども、子どもにも大人にも読んでもらえる絵本がある。

 その代表例がヨシタケシンスケさんになるでしょうか。今まであまりなかった絵本のグッズというのが出てきたのは、大人が絵本を楽しむようになったことの派生的な効果だと思います。

 五味太郎さんの『きんぎょがにげた』とか、ヨシタケさんの作品もTシャツなどのアパレルやマスキングテープのような雑貨にもなっている。ヒグチさんも絵本以上にグッズを楽しんでいるファンが多い」

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「まずは本の中身をどう楽しんでもらうか」と門野編集長は語る ©文藝春秋

 ただし、グッズがあるから大人が惹きつけられるというわけでもない。

「ミッフィーにしてもそうです。作者のディック・ブルーナさんは始めからこんなにたくさん商品化されると思って作っていたわけではないですよね。本という中でどう楽しんでもらえるかを考えて作っていたものが結果としてそうなっているわけです」

どうすれば読者が楽しめる絵本が作れるのか?

 では、どうやって楽しんでもらえる絵本を作るのか。それこそが最大の難題だと門野氏は言う。

 たとえばイタリアの作家ブルーノ・ムナーリの『きりのなかのサーカス』では、ページに穴が開いていたり、ページの形が変わっていたり、紙の種類がページごとに違っていたりと、たくさんの実験的な試みがなされている。

谷川俊太郎の訳でも有名な『きりのなかのサーカス』 ©文藝春秋

 日本の絵本は出版流通上の問題からある程度の制限があるものの、絵本というのは本来的には定型に一切縛られないフリースタイルなものなのである。

「僕らは日頃からいろいろな絵本を見て、作っていますけど、果たして何が正解なのかというのは全く言えないんですよ。文は短く、絵も限られている。どういう構成でどの場面を見せていくのか。どのぐらいの文章量が適切か。

 絵で説明していることをあえて文字で説明する必要はないので、それを削らないといけない。さらに言えば、読んでいて心地いいリズムもある。

 絵がうまければいいわけでもないし、あえて崩して描いたり、デフォルメした方が親しみを持ってもらえたりする。すごく不思議なんです」

 それは編集者にとっては大変さであるだろうが、表現者にとっては面白さでもあるのかもしれない。