将来が見えない主人公・どれみと、年をとらない魔女の苦悩
しっかり者のあいこ(声・松岡由貴)、バイオリンに励むはづき(声・秋谷智子)、帰国子女のももこ(声・宮原永海)、そしてチャイドルから大人の女優へと脱皮しつつあるおんぷ(声・宍戸留美)……と、級友たちが将来のビジョンをしっかりと見据えつつあるなか、自分だけが全く未来が見えてこないことに対して焦りと不安を隠せない主人公・どれみ(声・千葉千恵巳)は、ある日の下校途中、不思議な建物に目が留まる。
そこは、最近この町に越して来たガラス工芸師であり、“元魔女”の佐倉未来の自宅だった。ガラス工芸の魅力に惹かれるどれみに、未来はガラスの特性をこう告げる。「ガラスってね、冷えて固まっているように見えて、本当はゆっくり動いているのよ。(中略)あんまりゆっくりなんで、人間の目には止まっているようにしか見えないだけ。でも、何千年も生きる魔女はガラスが動いているのを見ることができる。いずれ、私も、それを見る」。
本話におけるガラスとは“魔女”のメタファーだ。“魔女見習い”であるどれみの将来の選択肢のひとつには当然、“魔女”がある。それは魔女見習いしか得ることのできない“特権”でもある。だが、その道を選んだ瞬間、“人“生は消え、“人”としての幸福は去る。未来は“魔女をやめた魔女”として登場するが、その“呪い”はかかったまま。ここでいう呪いとは“人間との寿命の違い”。“長寿”、それも何
未来は、“後輩”のどれみに語る。今、ヴェネツィアにいる高齢(90歳)のベテランガラス工芸師から留学を誘われている。だが、そのベテラン工芸師にガラスを教えたのは未来だった。どれみはここで初めて魔女の残酷な未来を知る。そのベテラン工芸師は、未来を、かつて自分が愛した女性の娘か孫だと信じて疑わない。他ならぬ愛した女性、その人なのに……。どれみは最初、ドレッサーにたくさん貼られていた世界各国のいろいろな人たちの写真を目にして、羨望の眼差しを向けていた。だが今は、その1枚1枚に哀しい想い出のあることを知る。
“未来が見えない”どれみを、未来はヴェネツィアに誘う。自身の孤独から逃れるためなのか? 本気でどれみを自分の後継に育てようと思ったのか? それとも単に試しただけなのか?……未来の真意が劇中で語られることはない。果たしてどれみの答えは? そして、物語の結末は?……もし未見の方で、このお話に興味を持たれた方がいたらぜひ!自分の目で確かめていただきたい。