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アニメーションの美しさにも注目

  細田監督は、“アニメーション”という技法を最大限に活かして、本エピソードのテーマである魔女の“光と影”を表現した。繰り返し、シルエットと光で表現されるどれみと未来の2ショット。美しい絵で描かれるガラス工芸の過程と、完成したガラス細工の美麗さ、そしてはかなさ。刻(とき)が停まったかのようで、その実静かに動いている風景の数々。そして何より自分たちの暮らす町で遊び、はしゃぐ二人……人は時に「この瞬間が永遠に続けばいいのに……」と願うもの。だが、その想いの裏に潜む悲劇や残酷性を、本話を通じて細田監督がそっと観る者に語りかけている。

 「どれみと魔女をやめた魔女」は細田守監督の非凡なる才能の発露であり、後の『時をかける少女』や、やはり主人公の名前が“ミライ”である『未来のミライ』('18年)に至る道の、最初の道標だった。

『時をかける少女』通常版DVD(販売元:角川エンタテインメント)

 昭和42年生まれの筆者にとってこのエピソードは、2000年代初頭の傑作として胸に刻み込まれてしまった。それはこの話が決して番外編や異色作でもなく、作品の“本質”を突いた内容だからだろう。奇をてらったり、脱線して目立つことは誰にでもできる。だが、あくまでも“王道の子供向け番組”というレールの上を走りながら、作品が持つ本質やテーマを深く掘り下げることは簡単なようで難しい。だからこそ、それが仮に1本でも出来れば、それは作品自体にとって本望なことなのだ。

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 『おジャ魔女どれみ ドッカ~ン!』は2002年の作品なので、決して清水Pの言う最近のアニメではないが、21世紀を迎えてなお、名作・傑作を生み続けているジャパニメーションの実状には改めて拍手喝采を贈りたい。

11月13日には、『おジャ魔女どれみ』放送開始20周年記念映画『魔女見習いをさがして』が公開される。© 東映・東映アニメーション

 そこには細田守監督や、『おジャ魔女どれみ』シリーズを起ち上げた佐藤順一監督ら、非凡なる才能が常にそのバックにあることを覚えていて欲しい。そして、映画『魔女見習いをさがして』公開を機に『どれみ』シリーズを観直して、細田監督や佐藤監督以外の才能にも目を向けていただきたい。“傑作の陰に天才クリエイターあり”だ。

 

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