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 青山学院大学の原晋監督も前回大会後にこんな風に語っていた。

「私の場合は選手の能力と適性を見て配置しているので、必ずしも『強いから2区』というのはないんです。『2区に適性を持つ強い選手』『1区に対応できる強い選手』という形で考えているので…」

「選手の適正を見て区間配置を決める」という原監督 ©文藝春秋

 実際に前回大会で青学大は2区に当時1年生の岸本大紀を起用している。岸本はルーキーとしては抜群の力を持っていたが、昨季のチームで言えばあくまでエースは1区を走った吉田圭太(現4年)だった。

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 また、前々回大会優勝の東海大も2区に堅実派の湯澤舜(現SGホールディングス)を起用している。湯澤はそつのない走りをする安定感のあるランナーではあったが、チームのエースというタイプではなかった。つまり、これまでは「区間に人を」当てはめていたものが、「人に区間を」当てはめるようになったのだ。

“エース区間は何区なのか”問題

 そして、それによって起こったのが駅伝の戦術化である。

 単に持ちタイムの速いランナーを並べて、エースは2区におけばいいという形ではなく、選手とコースの適性を見極め、レースの流れを想定したうえで区間配置を組む必要が出てきた。それはつまり、選手の実力はもちろん、それ以上に監督の区間戦術が大きな意味を持つようになったということだ。

今大会の優勝候補の一角に挙げられる駒大の大八木弘明監督 ©文藝春秋

 言い換えれば、エースの区間配置を見れば、各校の指揮官が描く今季のレース展開予想が見えてくるともいえる。

 ちなみにまず大前提として、現在の箱根駅伝で復路にエースを置く戦術はないと言っていい。いまのように高速化が進んだ駅伝では、前半で大きな差をつけられてしまうと取り返しがつかなくなる。背中の見えないランナーを追いかけながら、数分の差を縮めるというのはどんなスーパーエースでも不可能だからだ。

 それゆえ、基本的に各校ともエースが万全であれば往路に配置することになる。