お正月の風物詩、箱根駅伝が近づいてきた。

 今季は新型コロナウイルスの拡散防止のため、現地での観戦自粛が呼びかけられている。テレビ観戦のファンがほとんどとはいえ、12月29日には各校の区間エントリーも発表になり、気持ちも盛り上がってきているのではないだろうか?

「お正月の風物詩」箱根駅伝 ©時事通信社

 さて、そんな区間エントリーを眺めてみると、近年の箱根で見られていた傾向の変化が、今大会ではより加速したことがわかる。

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 端的に言うと、「エースを何区に置くか」という問題だ。

「花の2区」はもはや絶対ではない?

 箱根駅伝に勝つチームには、選手層の厚さに加えて“エースの存在”が欠かせないと言われている。よい流れの時はその流れを加速させ、悪い流れの時はその流れを断ち切る。優勝するには、ある区間でほかのチームの選手と明確に違いを作れるエースが必要なのだ。

 ファンには自明のことだが、ひと昔前まで箱根のエース区間と言えば「花の2区」の言葉に代表されるように、鶴見~戸塚を走る2区のことだった。

2区の区間記録は10000m日本記録保持者の相沢晃(東洋大→旭化成)が持つ ©文藝春秋

 これは全区間の中で2区は距離が最も長く、アップダウンもきつい区間のため、力のあるランナーが配置されることが多かったからだ。中盤にある名うての難所・権太坂に加えて、最後の3kmには走ったランナーをして「突然壁が出てきた」と思わしめるほどの急坂がある。

高速化する箱根路で起きた「変化」

 だからこそ最も力のあるランナーは基本的に2区に据え、山上りの5区に使う上りに強い選手と合わせてチームの基盤を作ることがほとんどだった。あるチームの監督の「2区と5区さえいれば箱根はなんとかなる」という発言もあながち間違ってはいなかったように思う。

 ところが、時代を経て箱根駅伝は高速化の一途をたどった。

 かつてはエース級の代名詞でもあった「10000m28分台」のタイムを持つ選手も各校に数名いるのが常識となり、難コースだったはずの2区も、1区からの流れで集団走に持ち込むことで、エースランナーを使わずとも「しのぐ」ことができるようになった。それに伴い、箱根駅伝そのものの戦略が大きく変わりつつあるのだ。