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 もちろん、カルテのデータ化によって人工知能が「こういう病気の可能性が高いですよ」と知らせたとしても、それは統計からはじき出された確率の高い一つの答えです。最終的には医師のチェックと判断が必要になりますが、診療行為は非常に実証的になってくるはずです。

 投薬や治療方針に対しても、このDNAの人にはこの薬が効果的だ、この治療法が良いとレコメンドがなされるようになる。いわゆるネットショッピングにおける「あなたにおすすめ」の世界ですが、データによる実証的な医療が実現できると考えています。カルテの電子化といっても、カルテに載っている情報が各所でバラバラですから、病名の付け方からフォーマットに至るまで、まずは情報の規格化から手をつけなければならないでしょうが。

フェイクニュース・ヘイトスピーチを排除する仕組みを

――杉本さんは公取委員長在任時の2019年に日本記者クラブの会見で、「プラットフォーム企業はフェイクニュースやヘイトスピーチに関する書き込みを排除するような仕組みを考えるべきではないか」と発言されました。公取委員長として、なぜこのような問題提起をされたのか、その真意を伺えますか?

杉本 熊本地震のときに、「動物園の猛獣が逃げた」というフェイクニュースがSNSで拡散された事例がありますよね。ああしたものを、どう防止していくかを考えなければならないのは当然のことだと思いますが、私が言いたかったことはもう一つあるんです。それは、取材して裏を取って丹念に仕上げられたニュースを扱うメディアと、フェイクニュースや差別的な書き込みのあるコンテンツも流してしまうプラットフォームとの間に、真っ当な競争基盤が果たして敷かれているのだろうか、ということです。

情報には信頼性が担保されるべき

 

――どういうことでしょうか?

杉本 ニュースをネットで読む、プラットフォーム経由でキャッチすることはもはや日常生活の一部です。そしてメディアもプラットフォームも同じく広告収入を重要な収入としています。しかし、信頼性の高い情報を発信するために取材コストをかけている既存メディアの広告収入は減っていく一方で、そうではないプラットフォームの広告収入は増えている。これはニュースを扱う事業者の立つフィールドとしては不公平だと思います。

 まずもって情報には信頼性が担保されるべきである。そのためにコストをかけるのは当然のことと思われる。であるならば、プラットフォームもまた、信頼性を担保するため、フェイクニュースやヘイトスピーチが自ずから排除されるような仕組みをコストをかけて作るべきだと考えるのです。

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