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「公務員のデジタル人材調達は難しい」GAFA時代の競争、日本はどう規制すべきなのか

杉本和行元公取委員長インタビュー #2

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データをオープンにし、他企業も活用できるように

――プラットフォーム企業がデータをオープンにし、他企業も産業インフラとして活用できるようにすべきだと。

杉本 そうです。プラットフォームは競合企業にデータへのアクセス権を設定する。その代わり、企業はプラットフォームに対してアクセス料金を支払う。これは、競争政策におけるエッセンシャル・ファシリティの考え方なんです。「不可欠資産」とも言うんですが、例えば電力会社の配送電網とか、携帯電話の電波網などは限られた資源で、既存事業者によって寡占・独占にならざるを得ない。そこに競争原理を入れて、企業が新規参入できるようにするためには、独占状態になっている不可欠資産に対するアクセス権を設定してあげることが必要になってきます。

 これからの産業はどのような分野においても「データ」がインフラです。であれば、プラットフォーム企業のいわば独占状態にあるデータは不可欠資産であり、そこにアクセス権をつけることが、競争基盤を整備する第一歩なんだと思うんです。

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産業別のシングルデータベースを作っていくべき

――プラットフォームのデータのみならず、国や地方自治体が持っているデータも不可欠資産ですね。

杉本 はい、そういったものを全部含めて産業別のデータベースを作り上げることを考えれば、既存産業とプラットフォーム産業との間に横たわる不公平感が是正され、レベル・プレイング・フィールドが確保できると思います。もちろんそこには、データの規格統一化の検討が必要でしょうし、個人情報をどう排除、無名化していくかも必要だと思います。欧州委員会はすでに、情報戦略の中で産業別のシングルデータベースを作っていくべきだと発表していました。日本もそこを考えていくべきではないでしょうか。

 

――主にどんな産業で整備が必要となっていくでしょうか。

杉本 金融、医療、環境、モビリティ、そして農業でしょうか。モビリティ産業においては地理情報や運転情報がプラットフォーム企業に独占されている中では、自動運転システムを作るのにも既存産業は劣位に置かれたままになります。医療に関しては医師会が前向きではなくカルテの電子化にもなかなか手間取ったところがありますが、間違いなく医療の効率化、そして効果的な治療が期待できるはずです。