自分では思ってもみなかったであろう役割を果たす人がたまにいる。それが政治家で、何度も繰り返していたらさらに興味深い。

 何を言いたいかと言えば石原伸晃氏のことである。

新型コロナで「即」入院した石原伸晃元幹事長 ©️文藝春秋

 新型コロナウイルスに感染した自民党の石原伸晃元幹事長が退院。一時悪化した症状が安定したという。石原は「心臓に既往症があるため医師の指示で入院した」とコメント(共同)。

ADVERTISEMENT

 体調が安定したということで何より。しかし今回石原の入院が話題になったのは「入院できずに亡くなる人が相次ぐ中で、無症状なのになぜ」(東京新聞「こちら特報部」1月28日)という点もあった。

《医療は本来こうあってほしいもの。(略)この際だから、「伸晃基準」をどうすれば全国民に広げることができるのか考えた。》(東京・同)

 コロナに感染するのは仕方ない。しかし人によって対処の格差が生じてはいけない。石原伸晃は身をもって論点を示したのだ。またしても…。

伸晃氏が果たしてきた「役割」とは

 そう書くのは石原伸晃の政治家としてのキャリアを見ると「自分では思ってもみなかったであろう役割」を果たす繰り返しなのである。ちょっと凄すぎるので振り返ってみる。

 まず安倍晋三が勝利した2012年の自民党総裁選。今では多くの人が忘れているかもしれないが当初の本命は石原伸晃だった。しかし失言の連発などで失速。2位にもなれない敗北を喫した。安倍長期政権をつくったのは石原伸晃なのである。

父・慎太郎氏の国政復帰の裏には伸晃氏の存在が…! ©️文藝春秋

父・慎太郎の国政復帰も後押し? 

 それだけではない。そのあと父親の石原慎太郎(東京都知事・当時)が国政復帰を表明した。

 オヤジの慎太郎は国政復帰を噂される度に否定していたが、石原家から首相を出すには自分自身でたたないとどうしようもないと思ったのだろうか。

「たちあがれ日本」と合流して党名を「太陽の党」と名付けた。たちあがったムスコで障子を破る描写をした芥川賞作「太陽の季節」の夢よもう一度という流れに思えたが、たちあがらないムスコへの不満のようにも見えた。