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「一瞬で人生が変わってしまう恐さ」片麻痺だけではない脳卒中の後遺症とは

脳外科医が診るのは、“脳”ではなく“人生”

2021/03/23
note

必要なのは周囲の理解と共感

――後遺症患者の支援にはどういったことが大切ですか?

子鹿 当事者やご家族にとっての一番の支えは、周囲の理解と共感だと思います。先ほども述べましたように、後遺症状の多くが目に見えないし周りから気付いてももらえない。中には自分が何を困っているのかさえうまく説明できない人もいます。

 車いすの方が段差で困っていたら助けますよね? それがモラルだと思いますが、失語症の方がうまく話せずにいたら最後まで傾聴したり、記憶障害の人が働けるように職場環境を整える、といったように行動できる人はなかなかいません。脳障害の症状を理解し共感する姿勢が、社会全体に求められていると思います。

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失ったものより残っているもの

――作品には強い願いが込められているんですね。

子鹿 患者様・ご家族・医療福祉スタッフに、勇気や希望を届けたいです。これまで多くの患者様に接してきて、自暴自棄になり、絶望し、そこから這い上がり、笑顔を取り戻していく。そのような過程にたくさん接してきました。そんな経験を含めながら紹介して、今現在苦しんでいらっしゃる方々に、「自分たちは一人じゃない」と感じていただきたい。

 失ったものより残っているもの、駄目だった昨日より明日の希望。人間の弱くて、強くて、美しい姿を伝えたいです。

◆◆◆

アンメット―ある脳外科医の日記―』第1巻は、本日3月23日(火)発売。

アンメット ーある脳外科医の日記ー(1) (モーニング KC)

大槻 閑人 ,子鹿 ゆずる

講談社

2021年3月23日 発売

「一瞬で人生が変わってしまう恐さ」片麻痺だけではない脳卒中の後遺症とは

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