脳外科医が診るのは、“脳”ではなく“人生”。「週刊モーニング」(講談社)にて連載中の漫画『アンメット―ある脳外科医の日記―』のキャッチコピーだ。
救命救急医療の発達によって、脳卒中による死亡者数は大幅に減少したものの、後遺症に苦しむ患者の数は増加している。厚生労働省の統計によれば、在宅生活を送る身体障害者の数は1970年に約140万人だったものが、2016年には約430万人と3倍以上に膨らんでおり、その原因疾患の第2位が脳卒中であった(第1位は心疾患)。
原作者の子鹿ゆずる氏は既に第一線を退いた元脳外科医。デビュー作となる本作品で子鹿氏が伝えたいことは何なのか? その思いを語ってもらった。
「脳の後遺症は片麻痺だけではない」
――本作品では救急や手術シーンを見せつつも、脳障害の後遺症について丁寧に描かれていますね。
子鹿 いろんな脳の後遺症を紹介したいと思っています。後遺症と言えば片麻痺をイメージする方が多いと思いますが、実際にはそれ以外にもたくさんの後遺症があります。失語症もその一つで、これは実際に患者様に接してみないと、どういう症状なのかなかなか分からないと思います。
さらに、高次脳機能障害と呼ばれる、記憶障害や空間認識の障害、感情や思考の障害が大変分かりにくい。症状として目に見えないこともあり、周囲も症状自体に気付けないため、ご本人が困っていても理解や援助が得られないことが多いです。
作品ではまず最初に片麻痺を取り上げ、失語症、記憶障害、空間障害など、順不同に紹介していくつもりです。作品を通じて多くの人に脳障害の理解を深めていただき、脳障害者が過ごしやすい社会の実現にわずかでも協力できれば嬉しいです。