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東京五輪を“擬人化”して見えてきた「問題の本質」 なぜメディアは現実を伝えないのか?

2021/03/23
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MIKIKO氏のプレゼンは好評だったのに…

 時系列をおさらいしよう。五輪・パラリンピックの開閉会式の演出チームは2019年途中からは振付師のMIKIKO氏が実質的な責任者になった。しかしコロナ禍による大会の1年延期に伴い、

《今度は森氏の信頼が厚かった佐々木氏が五輪とパラの両方を見る形へと移行した。》(スポーツ報知3月19日)

 まずこれに驚く。衝撃は次だ。

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《MIKIKO氏については徐々にチームから排除される動きがあり、最終的に11月に辞意を申し出るに至ったと「文春オンライン」で明るみに出た。》

 MIKIKO氏はPerfumeやBABYMETALの演出振付家であり、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』の恋ダンスも手掛けた。時間が少ない中で完成させたIOCへの開幕1年前プレゼンは好評だったという。

MIKIKO氏は星野源主演の『逃げ恥』恋ダンスも手掛けた ©️文藝春秋

 しかし。

《佐々木氏による“クーデター”が始まっていく。》(週刊文春3月25日号)

『はしご外されたMIKIKO氏』(日刊スポーツ3月19日)

 ここで出てきた名前は、やはりというべきか森喜朗氏とその仲間たちだった。

昭和オヤジスキーム「57年前の“三丁目の夕日”をもう一度」

 昭和オヤジスキームがいつの間にか開会式でもトップに立っており、コロナを言い訳にした過程の不透明さ。

 確かに森氏も佐々木氏も昭和からのやり手である。しかし今回あぶりだされたのは今まで成功してきたノリが、2021年の五輪や世界の潮流に決定的に合っていないことだった。その閉鎖性、差別性、古さ。

 今まであの人たちが成功してきた裏に一緒にあった「膿」が可視化されたのである。

森喜朗氏 ©️文藝春秋

 そもそも東京五輪師匠は最初からズレていた。

《最初に東京五輪を招致して失敗した都知事だった石原慎太郎も森と同様、その差別的発言が幾度も物議をかもしたが、2人が今回の五輪招致で夢見たのは1964年の東京五輪の高度成長だ。》(日刊スポーツコラム「政界地獄耳」2月19日)

 三丁目の夕日をもう一度。

 東京五輪師匠を支えたエラいおじさん達は多様性とか共生とかアスリートファーストより、57年前の夢よもう一度だった。寝言も古かった。