「行き場のない高齢者にとって最後の頼みの綱がお泊りデイなのです」
職員数を極力抑えて、人件費も抑えようとしている。
茶話本舗の別の加盟店で夜勤をしたことがある介護職員が言う。
「夜勤は夜6時に入って翌朝7時までの13時間勤務。そのうち5時間は休憩扱いで、時給は出ません。でも、部屋で数人の高齢者が寝ているのに、夜勤は1人なので、実際に5時間も休めるなんてことはあり得ない。2時間ごとに見回りをして、トイレの介助などに対応しないといけない。朝食の準備も必要です。儲け優先で利用者を増やしているので、そのしわ寄せが従業員に来ています」
その結果、お泊まりデイで働く複数の職員によると、利用者が起きて活動を始める朝方に、監視が行き届かずに怪我をする事故が相次いでいるという。
これだけの劣悪な環境であれば、利用者の家族から苦情が殺到しても不思議ではない。
だが、現実は違う。家族の側にも「月額10万円程度で大変な介護から解放されるならしかたがない」という本音があるのだろう。横浜市で高齢者の介護計画をつくるケアマネジャー(介護支援専門員、ケアマネ)の女性(46)は、お泊まりデイは「救世主」と言う。
「病院から退院を求められても、特養などの引受先も不十分だし、行き場のない高齢者にとって最後の頼みの綱がお泊りデイなのです。高齢者を施設に預けっぱなしで面会に来ない親族も多いと感じます。『連絡は死んだときだけでいい』と言う人さえいます。そうした親族を持つ高齢者は、お泊まりデイで救われているのです」
実際、埼玉県内にあるお泊まりデイの施設には、泊り続けて4年以上になる男女の高齢者が1人ずついた。90歳代のアキコさん(仮名)は「要介護2」(排せつや身の回りの世話に何らかの介助を要する)だが、自分で歩くこともできるし、会話も成り立つ。
アキコさんはなぜ自宅で暮らせないのか。施設の責任者の話はこうだ。
「被害妄想があって、同居している長男夫婦に殺されそうだとか、お金を盗んだなどと言って、嫁を責めるのだそうです。こちらに来たばかりの頃は、長男も時々は会いに来ましたが、奥さんをがんで亡くしてからは郵便物を届けに来るぐらい。実の母というのにアキコさんの面倒を見るのも嫌がって、『帰ってきたら殺す』とまで言っているので……」
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