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子どもが「ママの人生と、私の人生とは別」と

――夫婦別姓を選択したことで、家庭内で変化はありましたか。

牧野 家族でいろいろと話をすることが増えました。最近長女に「ママはいつか海外に住みたいんだ」と話したら、「いいんじゃない。ママはママの人生で、私の人生とは別だしね」と返事があって驚きましたし、息子もおもしろいことを言っていて。

 オンライン授業でモチベーションが下がってしまったのか、勉強をサボっていたら夫に怒られてしまったんですね。それに対する息子の言い分は、「ただ勉強しろと言われても、将来どんな仕事が残ってどんな仕事がなくなるかも分からないのに、やる気がでないよ」と。

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 息子なりに「枠」を外してものを見ようとしていると思えたので、「その考え方、すっごい面白いよ」と褒めました。その後で、「でも、だからこそいろんな風に対応できるように知識を入れておくというのもいいんじゃない?」という話もしました。

多様な考えに触れる機会を、社会全体で生み出していけたら

――お子さんも含め、ご家族それぞれの「個」が確立していますね。

牧野 家族をつなぐものは「名字」ではなく「信頼」。そこに上下はなく、個が並列しているもの。これが、私なりにたどりついた「家族のかたち」です。この考えには家族も賛同してくれました。

――夫婦だけでなく、子どもたちの意識も大きく変わった。素晴らしいです。

牧野 夫婦別姓を選択したことで家族で話し合う機会が持てたことは本当に良かったと思っています。その一方で、家族の中でしかジェンダーのことを勉強できないという環境は、お父さんお母さんにとってはすごくプレッシャーになるなと感じました。

 親だけに任されてしまうと、親自身がおかしいと思うことであっても、自分たちの認識が間違っている可能性もあるし……と踏み込んで話すことを躊躇してしまうかもしれない。それこそ、多様な考えに触れる機会を地域や学校といった社会全体で生み出していけたらと思うんです。

 ジェンダーや感情の言語化について、また性教育といった、大人もまだまだ勉強の足りない分野を、社会全体で子どもと一緒に話し合っていける環境作りが進んでいけばいいなと思います。

写真=深野未季/文藝春秋