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「1話完結」から「サザエさん」方式へ

 最近の視聴者は1話完結ものを好むと言われている。だから1話完結のミステリーや医療ものが好まれ、続けて見ないと結末がわからないものは敬遠されると考えられている。

 できるだけ早めに答えを知りたい。わざわざ最終回でがっかりして見た時間を損したくない。それももっともである。近年は1話完結どころでなく、1時間で2本立ての「サザエさん」方式(サザエさんは3本立てだが)も作られはじめた(「俺の話は長い」(日本テレビ系 19年)や「珈琲いかがでしょう」(テレビ東京 21年 一部2本立て)など)。

「珈琲いかがでしょう」の主演を務めた中村倫也 ©AFLO

 1時間1話で完結させることは難しくとも、5話くらいの長さで一旦話を完結させられれば、視聴者にとっても見やすいドラマになる。朝ドラですら、15分×1話や、15分×2話分の短編からなる特別編を本編の途中に挿入する試みを行っているくらいである(「エール」では1週間の放送で3本の短編が放送された)。

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制作者側にもこんなメリットが

 また、連ドラは、前半の視聴者の反応を見ながら内容に手を加えていくこともあって、例えば、主人公が最終的に誰と結ばれるか、あるいは、恋人と別れるか結ばれるか決めていなかったり、犯人が誰か決めていなかったり(これが連ドラの驚くべきところ)、早くに亡くなる予定だった役を、視聴者の反響で長生きさせるなどして盛り上げていくことがある。だが、そうして展開が定まらないまま進んでいくよりも、エピソード(章)を替えることでリスタートしたほうがキャストもスタッフも心身共に楽であろう。

 主演は別として、その他の出演者も長いこと拘束しないで済む利点もある。つまり、短い作品のほうが見る側にも作る側にもリスクの軽減ができるのである。

 ただし、短ければ簡単に作ることができるかといえばそういうわけではない。短編には短編の技が必要だ。ぜひとも短編から才能ある作家が育っていってほしいと願う。