キャッシュレス決済ができず、物々交換やツケ払い
ネットがつながらなくなると、乗り物も買い物もスマートフォンを活用したキャッシュレス決済が利用できなくなりました。フードデリバリーだって使えません。中国はキャッシュレス社会となって久しく、「現金を最近使っていない」「財布を持ってきてない」という人は珍しくなかったのですが、現金社会に逆戻りするわけです。……なんだけど、手持ちの現金がほとんどないし、ATMが水没して壊れている。さらに物不足の中でミネラルウォーターなどの値段が10倍にも跳ね上がってる。詰みです。
そうはいっても、家に老人がいるとキャッシュレス社会にフィットしてなかったので現金を抱えていることからある程度はなんとかなるものの、若者だけの家庭だとほとんどなにも支払えなくなります。そこで個人がバケツひとつもって物々交換をしていました。「家にストックしている冷凍餃子をはじめとした冷凍食品は停電で溶けてしまうので、ダメになる前に売ってしまおう」という人が売り、「生鮮は希少で何倍もの価格に跳ね上がっているから、むしろ冷凍食品を狙え」という人がマッチング。現金払いや物々交換がそこでおきたといいます。
また「ネットが繋がってから連絡するから後で払って貰えればいいよ。とりあえず名前と電話番号をメモして商品を持っていきな」と、キャッシュレスのツケ払いをする人や商店は多かったようです。知らない地元民同士が、後で払ってくれるという信用のもとに取引してるんですね。
2週間以上ネット遮断が続いた地域も
こうしたネットから遮断された生活は、地域により2週間以上あったとのこと。ネットが繋がるや、アリペイやウィーチャットペイには知人からの投げ銭入金記録が書き込まれ涙する人もいたとか。
中国メディアがどれだけ多くの人が寄付をし、政府は無人機を飛ばし、救援を行い、通信会社は復旧に努めたかを絶賛する記事を掲載し、フォロワーを増やしたいネットユーザーは心のこもっていない写真や薄い応援ポエムを送る一方、ネットがつながらない世界を生き抜いた現地の人々は、持てる限りの道具を活用してなんとか生き抜いていました。なんというか、インターネットが深く生活に根ざした今、災害に対してネットインフラはときに弱く、ネットインフラ被災者とそうでない人の災害に対する感覚は中国でもまったく別モノなのだなあと思ったのでした。
鄭州は大都市なので多くの人が発信していて状況を把握できますが、新郷や他の地方都市の情報は限られています。街中の買い物動画でまるで見ることのなかったフードデリバリーの出稼ぎ労働者は、電動二輪車が水没して壊れ、デリバリーの受注もなくて大丈夫なのでしょうか。何事もないことを願うばかりです。