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結婚式当日に花嫁が逃亡、代わりに妹が…「テレフォン人生相談・50年」加藤諦三(83)が語る最も衝撃的だった“相談”とは

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――多くの人間が悩みを抱えているわけですが、なぜ相談者は「テレフォン人生相談」にアドバイスを求めに集まるのでしょうか。

加藤 相談をする場所がそれだけ無いってことなんでしょう。あとは、同じような相談でも、その人が本当は何に困っているのか、という部分に答えることはずっと意識しています。

――どういうことでしょう?

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加藤 同じ不登校という問題で100人が相談に来ても、答えは100通り違うんです。「どうしてこの人は、今のタイミングで、しかも私のところへ相談しにきたか」という個人的な背景を考えます。だから番組が成り立つんですよ。本人が悩みだと思っていることが実際の問題と違うケースも多い。それを見抜いて本当の悩みに応えるから、リスナーが「今週も聞いてみるかな」と、なるわけです。

加藤氏はこれまで500冊以上の著書を出版している ©文藝春秋 撮影・石川啓次

「相談者が気持ちよくなるための回答はしない」

――加藤先生は事前に相談内容を聞かず、ぶっつけ本番でスタジオで相談者の悩みに触れると聞きました。いったい、どのようにして悩みを的確に把握されるのでしょうか。

加藤 直接会って話を聞くわけではないので、まずは年齢、性別、家族構成や仕事について聞いていきます。そうすると、だいたい最初の1分間くらいで本当の悩みが見えてきます。たとえば高齢の女性から「息子夫婦がうまくいってない」という相談を受けたのですが、質問しても「何が問題なのか」という具体的な話が出てこないことがありました。変だなと思って探っていったら、実際は「孫にもっと頻繁に遊びに来てもらいたい、自分が孤独だった」という本人の希望が見えてきたこともあります。自分が何に悩んでいるか、何を求めているか、というのがわからないケースはとても多いです。

加藤諦三氏 ©文藝春秋 撮影・石川啓次

――「自分が孤独で寂しい」ということを認めるのはストレスもありそうです。

加藤 「テレフォン人生相談」がなぜ長く続いているかというと、表向きの立派な回答や、相談者が気持ちよくなるための回答をしないで、本当の問題をいつも探しているからです。悩みの回答の敵は良識ですから。

――「悩みの回答の敵は良識」とは面白いです。

加藤 離婚するか迷っている人がいたとして、本人は「子供のためにも離婚しない方がいい」と思っているケースが多いんです。その背中を押してもらうために、「テレフォン人生相談」に電話をかけてくる。だから良識的には、「もう少し我慢して関係を再構築してみなさい」とアドバイスするのが穏当です。しかし、実際は離婚した方が幸せになれるケースだってあるわけですよ。丁寧に話をしたうえで、離婚した方がいいと納得してくれる相談者も多くいます。「世間体や孤独を恐れて、勇気がないのを正当化しようとしていただけだった」と。