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――番組の放送は約14分ですが、実際の相談は1時間前後、相談者が納得しない時はそれ以上長くなることもあるというのは本当ですか。

加藤 本来なら友人や相談センターに話すことを、なんの見ず知らずのこの「テレフォン人生相談」に相談してくるということは、それだけ相談相手がいない孤独ということなんです。相談者は真剣に命懸けで相談してくるわけですから、こちらも命がけで答えないと相手には分かりますよね。ですから、番組の収録が終わったあとは、すごく疲れるんですよ。

――これまで数千人の相談者と向き合ってきましたが、加藤先生が相談に答える時のベースになっている考え方などはあるのでしょうか。

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加藤 私は精神分析をとても大切にしています。人間が不安を避けようとして結果的に不満を求めてしまう生き物であることや、トラウマという概念の研究など、人間が何に、どういう仕組で苦しんでいるかを的確に発見した精神医学者たちの功績は大きいです。

番組を始めて10年頃、1980年代前半の加藤氏

――長い番組の歴史の中で、印象に残っているハプニングはありますか。

加藤 相談の途中で相手に電話を切られたことがありました。しかもその様子がそのまま放送されて、反響も大きかった回でした。

――何があったのでしょう?

加藤 依存的敵対関係といって、その時の相談者がまさにこのタイプで、敵対している相手に依存してしまうんです。敵対して相手のことを認めないのに、相手から離れられないどころかしがみついてしまう。でも私としても、本人が喜ぶだけで何の解決にもならない回答をするわけにはいかないから、「そんなに気に入らないならなんで電話を切らないの」と相手の心理的矛盾を指摘しました。そうしたら、電話を切られたんです。

2016年には瑞宝中授章を受章している ©文藝春秋 撮影・石川啓次

世間体を気にした母親が…

――加藤先生の人生相談が真剣勝負であることが伝わるエピソードですね。想像を超える質問が来て驚いたことはありますか?

加藤 10年以上前になりますが、離婚したいという女性の相談者に「お見合い? それとも恋愛?」って聞いたら相談者は「どっちでもない」っていうんです。私が「他にどんな結婚があるの?」と言ったら、それがすごい話でした。相談者の姉が結婚式の当日に「あの人と結婚したくない」と言い出し、妹の相談者に母親から「代わりに結婚してくれ」と電話がかかってきたというんです。母親に土下座して泣かれ、それで本当にそのまま結婚したと。

――すごい話ですね。

加藤 私もそんな結婚があるのかと驚きでした。相手の男性も不思議で、結婚式の当日に結婚相手が変わったことになりますよね。もちろん「離婚した方がいい」と言いました。母親が世間体を気にしたということなのでしょうが、それで本人が幸せになれる可能性は極めて低いですよね。