サプリメントは時に健康を害する
ではどのようなサプリメントを摂れば良いのだろう、私はサプリメントを摂った方が良いのだろうか?と迷ってしまう方もいるだろう。アメリカ医師会の雑誌『JAMA Internal Medicine』に患者向けの説明文章(*7)がある。ここではそれを参考に、私が一部説明を加えたものを紹介する。
*7 Incze M. Vitamins and Nutritional Supplements: What Do I Need to Know? JAMA Intern Med. 2019;179(3):460.
(1) サプリメントは健康に有害な成分を含むことがあり、薬や他のサプリメントと一緒に摂取すると健康に有害な作用を及ぼす可能性がある(アメリカでは年間約2万3000人がサプリメントが原因と考えられる健康被害で救急外来を受診していると推計されている)。
(2) サプリメントに対する規制は弱く、その安全性や有効性に関する国の機関による評価はほとんどされていない。
(3) バランスの取れた食事によって、多くの場合健康を維持するのに必要なビタミンや栄養素は十分摂取できる。日本ではしばしばカルシウム不足が指摘されているが、前述の通りサプリメントによるカルシウムの補充が骨折の予防になるというエビデンスは不十分である。
それでもサプリメントを摂るべき人
一方、サプリメントを摂る必要がある人もいる。それは次のような人である。
(1) 妊娠可能年齢の女性で、妊娠する計画がある場合。
(2) 骨粗しょう症があり、食事によって十分量のビタミンDが摂取できない場合。
(3) 血液検査によってビタミンB12欠乏症、鉄欠乏性貧血、亜鉛不足による味覚障害などが指摘されており、医師からサプリメントの摂取が指示されている場合。
(4) 消化器の病気を有していたり、消化器の手術を受けており、それに伴う栄養の吸収障害がある場合。
例えば、胃を切除すると鉄分やビタミンB12の吸収障害による貧血、カルシウム吸収障害による骨粗しょう症がしばしば起こる。その場合はサプリメントによる補充が推奨される。
特に妊娠初期に葉酸の摂取量が少ないと、二分脊椎をはじめとする胎児の神経管閉鎖障害と呼ばれる先天異常のリスクが上がることが知られている。妊娠中には通常よりも多い葉酸が必要で、食事からの摂取だけでは不足する可能性があるため、葉酸のサプリメントによる補充が推奨されている。妊娠が成立する1か月前から摂取することが有効だとされており、妊娠に気づいたころには遅いため、妊娠を計画している女性だけでなく、妊娠する可能性がある女性には葉酸のサプリメントは推奨される。