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市場規模は1兆円超えだが「健康上のメリット」があるエビデンスはなし…それでもサプリメントを摂取したほうが良い“4つのパターン”とは

『HEALTH RULES (ヘルス・ルールズ) 病気のリスクを劇的に下げる健康習慣』より #2

2022/02/02
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がんや心筋梗塞のリスクは下がらない

 もっと詳しく見てみると、ALAの摂取によって心臓の不整脈のリスクが3.3%から2.6%へとごくわずかに下がる可能性が示唆されたが、効果があまりに小さかったため、研究者たちはオメガ‐3脂肪酸の心臓へのメリットはほとんど無いと結論づけた。さらに、今年に入ってVITAL試験と呼ばれる2万5000人以上が被験者となった大規模な実験(*4)(この研究はオメガ‐3脂肪酸とビタミンDの両方の効果が評価できるようデザインされていた)の結果が報告されたが、やはりオメガ-3脂肪酸のサプリメント摂取によって、がんおよび心筋梗塞のリスクは下がらなかった。

*4 anson JE et al. Marine n-3 Fatty Acids and Prevention of Cardiovascular Disease and Cancer. N Engl J Med. 2019;380(1):23-32.

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 では、昨今期待されているもう1つのサプリメントである、ビタミンDはどうだろうか? 残念ながら、ビタミンDに関しても、まだ「健康上のメリットがあるというエビデンスはない」というのが結論であるようだ。2014年に発表されたコクランの検証(*5)では、159の実験結果が同定され、その中で56が質が比較的高く、評価可能であるとされた。その結果、高齢者に限りビタミンD3(ビタミンDは、キノコ類に含まれるビタミンD2と、魚に含まれるビタミンD3に分けられる)によって死亡率が下がる可能性が示唆されるものの、研究の質が全体的に低く、ビタミンD摂取による健康上のメリットははっきりしないと結論づけられた。ビタミンDやカルシウムのサプリメントが、骨折の予防になるのか、という観点においても、エビデンスが不十分で、ビタミンD摂取による健康上のメリットがあるとも無いとも言えないと結論づけられた。そもそもビタミンDは日光を浴びると皮膚で合成されるため、サプリメントで摂取しなくても日光を浴びれば良いという説もある(もちろんそれでもビタミンDの量が不足するのでサプリメントが必要という意見もあるが……)。前述の最新のVITAL試験では、ビタミンDサプリメントの健康への影響も評価(*6)されたが、偽薬(何の効果もない偽物の薬)と比べてがんや心筋梗塞を引き起こすリスクは変わらないという結果であった。

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*5 Bjelakovic G et al. Vitamin D supplementation for prevention of mortality in adults. Cochrane Database Syst Rev. 2014;10(1):CD007470.

*6 Manson JE et al. Vitamin D Supplements and Prevention of Cancer and Cardiovascular Disease. N Engl J Med. 2019;380(1):33-44.