大部分のサプリメントは無意味
サプリメントで本当に健康になれるのであれば、それに越したことはない。それではサプリメントと健康の関係に関して、エビデンスの観点からはどのようなことが分かっているのだろうか。
結論から言うと、健康にメリットがあると考えられているサプリメントは数少ない。サプリメントの市場規模が大きいこともあり、それによって利益を生み出そうとしている企業がたくさんある。これらの企業が積極的に研究に資金提供していることもあり、サプリメントに関しては様々な研究(*2)が行われている。その大多数が期待されたような効果を得られていない。代表的な例を挙げて見てみよう。
*2 The New York Times. Vitamin D, the Sunshine Supplement, Has Shadowy Money Behind It.
おそらくいま世界で最も活発に研究が行われているのが、オメガ‐3脂肪酸とビタミンDの2つであろう。オメガ-3脂肪酸とはαリノレン酸(ALA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)など、魚やナッツ類に含まれるいわゆる「健康に良い油」のことである。魚やナッツ類の摂取量が多い人ほど心筋梗塞や脳梗塞など動脈硬化で血管が詰まる病気のリスクが低いということは複数の研究結果で証明されているため、オメガ-3脂肪酸がその原因となる成分なのではないかと考えられ、研究が進められてきた。
2018年にコクラン(世界中の研究者と協働でエビデンスを統合し発表する、英国を本部とする研究チームのこと)によってオメガ-3脂肪酸に関するエビデンスが統合され、検証(*3)された。オメガ-3脂肪酸に関して79の実験(総勢11万2059名の被験者)が同定された。 そのうち25の研究が質が高いと評価され検証された。その結果オメガ-3脂肪酸の摂取によって心筋梗塞などによって死亡する確率は変わらないと結論づけられた。
*3 Abdelhamid AS et al. Omega-3 fatty acids for the primary and secondary prevention of cardiovascular disease. Cochrane Database Syst Rev. 2018;7(7):CD003177.