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 ロシア人1人当たりの純アルコール消費量は年間18リットルに上り、世界一の酒好きであることはメドベージェフが認めたが、「白書」は、酒税が低く抑えられ、地下鉄4回分(100ルーブル=約300円)でウオツカ1本が買えると指摘。「プーチンは友人のために、酒税を低くしている」と疑問を呈した。

写真はイメージです ©iStock.com

 ノバヤ・ガゼータ紙が伝えたプーチン周辺の億万長者リストには、KGB時代の元同僚で、アパートの同じ階に住み、現在はガスプロム副会長、大手冶金企業社長を務めるバレリー・ゴルベフ、旧東独情報機関シュタージの友人で、バルト海ガスパイプライン会社幹部のマチアス・ワルニグらの名も挙がった。

 プーチンに抵抗したホドルコフスキーは資産を没収され、シベリアの刑務所に服役したのに、プーチンの側近や友人は政権の庇護下で好き放題にビジネスを展開し、億万長者に躍り出た。

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不正蓄財疑惑のキーパーソンは誰?

 プーチンはクリーンなイメージが売りだが、「プーチン腐敗白書」は彼自身の不正蓄財疑惑にも言及している。そのキーパーソンは、サンクト時代の旧友、ゲンナジ・チムチェンコだ。

 プーチンがチムチェンコと会ったのは90年ごろで、当時はペテルブルクの石油精製工場で営業部門の下っ端だった。食糧不足が広がった90年代、プーチンが副市長として進めた石油・ガスを海外の食料と交換するプロジェクトに関与。市役所を中心に設立された貿易会社の幹部となった。やはり柔道クラブ「ヤワラ・ネバ」の創設メンバーの1人で、ロシア銀行の大株主だ。

 一介の石油トレーダーだったチムチェンコはプーチン政権発足後、国営ロスネフチなど政府系石油企業の輸出を一手に任され、ビジネスは飛躍的発展を遂げた。今日、彼が社長を務める石油輸出企業グンバーはロシアの石油輸出の3分の1を手掛けている。原油価格が高騰し、ロシア産原油が輸出されるたびに、チムチェンコの富が飛躍的に増える構図だ。

 チムチェンコはメディアに登場しない謎の人物で、ユコスの解体・没収劇でも、舞台裏で重要な役割を果たしたとされる。

 90年代末にフィンランド国籍を取得し、二重国籍。99年の年収は40万ドルだったが、11年の個人資産は約100億ドルに膨れ上がり、ロシアで17位の大富豪に躍り出た。「白書」によれば、チムチェンコの会社には他の業者よりも有利な措置が与えられている。

 現在は、ガスプロムに続くガス業界2位、ノバテクの大株主となり、実質的な経営権を取得。北極圏のヤマルガス田開発の権益を政府から得た。国策プロジェクトに寄生し、国益と私益を両立させるのが、プーチン取りまきグループのビジネスの極意だ。

「チムチェンコがいかにして政府系企業の輸出利権を確保し、プーチンがそれにどうかかわったかは謎だ。ユコスの国有化プロセスなどと併せ、いずれ真相が分かる時が来る」と「白書」は書いている。