プーチン取りまきグループの腐敗は、内外で問題視されつつある。ノーボエ・ブレーミャ誌は、プーチンとそのインナーサークルがインサイダー取引で扱う資金は1400億~2000億ドルに上り、GDPの10~15%を占めると推測した。
ウィキリークスが暴露した米外交官の公電は、ロシアを「実質的なマフィア国家」とし、プーチンを「アルファドッグ(群れのボス犬)」と酷評していた。
NHKの石川一洋解説委員は「魚は頭より腐る。最大の課題は、プーチンが作り上げた不平等なビジネスモデルである。プーチンの友人たちには治外法権が与えられ、すべてが許される。その他の者には、厳しい法の仕置きが待っている。この不平等な構図の克服なくして、法の下での平等はあり得ない」(『世界』11年12月号)と指摘した。
米国に亡命したコレスニコフはワシントン・ポスト紙(10年12月23日)に対し、「プーチンは埋蔵金について定期的に説明を受ける。私は過去8年間、シャマロフの指示で年に2、3回、プーチンの投資に関する運用実績の資料を作成した。シャマロフは報告した後、プーチンの指示やコメントを私に伝えた」と述べた。
世界の指導者は大抵、個人資産を運用しており、これによってすぐには不法蓄財とみなすことはできないが、プーチンに不利な機密情報が次々に公表され始めたこと自体、カリスマの失墜が始まったといえよう。
「プーチン宮殿」の建設・維持費は…
大統領や首相のヨット、邸宅の豪華さもロシアのメディアで暴かれるようになった。
11年に黒海沿岸のソチで就航した大型豪華ヨット「シリウス」は、大統領府が総額4100万ドルで購入。11組のゲストを招くことができ、大統領府は14年のソチ冬季五輪の際、各国首脳を黒海のヨットクルーズに招く計画という。クレムリンはこの他にも「パラーダ」「オリンピア」「ロシア」などの豪華ヨットを保有している。
「シリウスの維持費は年間400万ドルで、高齢者1400人分の年金総額に匹敵する」と「白書」は指摘した。
大統領や首相の官邸・別邸の贅沢さも際立つ。「白書」はこうした邸宅が海外も含め26あるとし、一部の写真も公表した。26に上る「プーチン宮殿」の建設・維持費は総額1640億ルーブル(約4920億円)に上るという試算もある。
プーチンが使用するソチのリビエラ邸は、イタリア風の宮殿やコンサートホール、3つのヘリポート、フィットネスクラブ付きの豪華版。10億ドル以上を注ぎ込んで05年から大改装され、「21世紀の皇帝の宮殿」(「白書」)に変身した。
コレスニコフは、「資金は主として、スーパーリッチとなったプーチンの友人らが寄付した。汚職、腐敗、窃盗の組み合わせによって支払われたものだ」と指摘した。一部の宮殿は疑惑追及を逃れるため、新興財閥に売却されたとの報道もある。
資源価格高騰で、プーチン体制下の12年にロシアが手にした石油・ガスの富は5兆ドル以上に上るといわれる。ロシアの反政府系女性記者、ユリア・ラティニナはラジオ局モスクワのこだまで、「政権は400万ドルかけてエカテリンブルクに大統領別邸を建設したり、2億5000万ドルかけてサンクトペテルブルクの宮殿を大改修したりしたが、高速道路は1本も建設しなかった。中国はこの間、6万4000キロの高速道路を建設した。プーチンは近代的輸送インフラの建設が不可欠と訴えたが、膨大なオイルマネーで一体何を作ったのか」と批判した。