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誰もブレーキを踏まない

 もうひとつバブルの前提は、ブレーキがないことである。80年代バブルを潰したのは銀行に対する総量規制だ。伸びようとする信用に網をかぶせる政策は劇的に効いた。手前では日銀は低金利を動かせなかった。日銀がブレーキを踏まなかったことが投機を許し、その後で総量規制が急ブレーキを踏んでバブルは崩壊した。

 今度は、金利上昇が財政運営を制約するという意識が、巨大緩和の修正を止めるに違いない。ここ数年、政府がリフレを信奉する人物を選んで日銀政策委員に送り込んでいる。これも、日銀がバブル潰しに動きにくい素地となる。

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 もともとリフレ派は、90年代に銀行が不良債権処理などしなくても、企業の過剰債務は資産バブルを起こせば自然になくなると主張していた。それが金融不安後のデフレに対して、人為的に物価を中央銀行が操作できると言い始めた。そして財政問題が深刻化すると、「消費税率など上げなくてもよい、景気を良くすれば税収増で何とかなる」と主張した。不良債権(企業の過剰債務)を資産バブルで消す発想が、政府債務を次のバブルで消そうという発想に転換したのである。

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 今後注意すべきは、バブル的な兆候に対して、「これはバブルではない」と発言する人々がメディアに現れるときである。この発言にはバブルにブレーキを踏んでほしくないという心理が働いている。また、財政再建などしなくてもよいという主張も危険だ。もう日本の財政は後戻りできない位に深刻だが、さらに財政出動を願う人がいる。そうなれば、最後はバブルで政府債務を解消しようという荒技の選択に日本は追い込まれてゆく。