文春オンライン

2022/07/19

女子医大と至誠会が交わした「給与等に関する覚書」の意味

 そこで、岩本氏にインタビューを申し込んだが、取材拒否。文書での質問状には、岩本氏個人の代理人になった弁護士から、次の回答が返ってきた。

「出向契約に基づき支払った金額が、出向元でどのように処理されているかについては、本学としては把握するものではありません。架空請求といった概念が生じる余地はありません」(要約、以下同)

 その後、新たに女子医大と至誠会が交わした「給与等に関する覚書」が存在することが判明した。覚書には、女子医大が出向職員に支払う給与額について“両者が合意”していることが記録されている。にもかかわらず、実際に支給された金額と、最大100万円の開きがあるのは不自然だ。

 しかも、この覚書には「ボーナス分も含めて毎月の給与額とする」と明記されていた。つまり18年と19年に合計1662万円も女子医大が支払ったボーナスは、契約上はありえないものだったのだ。

 そもそも、出向職員の給与を出す女子医大と受け取る側の至誠会、この両方のトップを岩本氏が務めている。これは私立学校法で禁じている、「理事の利益相反取引」にあたる可能性が高い。

「給与等に関する覚書」と岩本氏(コピーした資料を一部加工)

【疑惑のカネ2】元宝塚スター親族企業に1億円“公私混同の契約”か

 宝塚歌劇団で主役を務めるトップスターには、並外れた経済力で支えるパトロン=通称「おばさま」が存在する。実は、月組の元トップ・彩輝直の「おばさま」は岩本氏だった。

 “第二の疑惑”は、この元タカラジェンヌ親族企業との公私混同の契約である。

 前述の“第一の疑惑”の舞台となった、至誠会から女子医大への出向契約について、女子医大の監事(弁護士)から「委託の色彩が強いのではないか」との指摘があったとされる。これを受けて、2020年から出向契約を業務委託契約に切り替えることになった。だがその際に、契約先は至誠会ではなく、株式会社ケネス&セルジオ(以下、ケネス社)という会社に、すり替えられていたのである。

 女子医大とケネス社の「業務委託基本契約書」によると、契約期間は2020年4月1日から22年12月31日とある。経営統括部の業務支援、理事長秘書業務全般として、報酬は月額385万円。21年3月からは岩本氏の専属運転手の費用が加わり、月額451万円になった。今年4月分までに、ケネス社に支払われた報酬総額は、実に1億円を超える。女子医大では、年間1000万円以上の契約は理事会運営会議の承認が必要だが、この会議に出席していた元理事はこう証言する。

「至誠会の出向契約を業務委託に切り替える稟議は、よく覚えています。岩本理事長が、まくし立てるように話していたのが印象的だったからです。ただ、この時にケネス社という名前は出ていませんでしたので、(取材を受ける)今まで私は知りませんでした」

 さらに、ケネス社と契約するには稟議書が必要になるが、この書類もなかったという。