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嵐・二宮和也が後輩3人を束ねるフシギさ…24時間テレビについて語っていたこと「いい子になりすぎていた」

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2022/08/31

撮影段階で二宮が提案したこと

 主人公の姉を演じる市川実日子、そしてロボット博士役の奈緒も含め、少人数ながら演技力の高い俳優とミニマムで可愛らしいCGロボットをメインに物語を進めていくという、邦画の資本規模に合わせた戦略的な「日本モデル」として作られた映画が『TANG』に見える。

「これは、僕らのレベルで言うと、歌っていないだけでミュージカルです。それくらいポップです」と二宮和也が舞台挨拶で語る通り、彼も含めた俳優陣は、普段のリアリズムの演技とはギアを変えて演じている。

 中でも注目されたのは、映画の公開後に監督から「劇中のロボット、TANGの声とモーションキャプチャーも二宮和也が演じている」と明かされたことだ。それは監督陣が最初から意図したものではなく、撮影段階で二宮和也の方から提案したことなのだと言う。 

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まだあどけない嵐の5人の様子 ©文藝春秋

 演技は音楽のセッションにも似ていて、常に相手のセリフを聞きながらそのリズム、トーンに合わせて自分の演技を変えていく。上手い俳優ほどそうだ。

 だが、『TANG』のようなCGキャラクターを相手にする作品では、撮影の現場で演者は相手のセリフを聞くことができず、後で合成される空間に向かって演技しなくてはならない。二宮和也がTANGの動きやセリフも自分で演じたいと提案したのは、そうすることで自分が劇中で演じる主人公の春日井健とTANGの会話のリズムとトーンを一人二役で把握し、コントロールできると言う理由もあったのかもしれない。

 実際に完成した映画を見ると、映画の半分以上は主人公の健とTANGが交わす会話、観客が思わず微笑んでしまうユーモラスで軽妙なやりあいを軸に進んでいく。だが実際にはその漫才コンビのように息の合った二人のセッションは、ほぼ二宮和也の「一人芝居」なのだ。

 観客を惹きつける幼児のように可愛らしいTANGの動きは、それを迷惑そうに突き放す主人公の表情や仕草でより一層引き立ち、観客はTANGに魅了されていく。スイカにまぶした塩が甘さを引き立てるように、その「塩味と甘さ」の演技はどちらも二宮和也がコントロールしているのだ。