筆者も以前ヤンキー・スタジアムの外野席で観戦したことがあるが、試合を観るというよりも、むしろヤジを飛ばすことを楽しみにしているのではないかと思うほどに元気なブリーチャー・クリーチャーを見掛けたことがある。おそらく相手チームの右翼手は、かなり鋼のメンタルが求められるだろう。
ヤンキー・スタジアムに限らず、ヤジは全米のいたるところの球場で飛び交う。2017年にワールドシリーズを制したヒューストン・アストロズが、当時、対戦相手のサイン盗みを行っていたという告発がなされたときは、しばらくの間、遠征に行くたびにヤジの嵐にあっていたのは記憶に新しい。
仮にサイン盗みといったことが無くても、試合中に選手同士がエキサイトした中で、ヤジや中傷が飛び交うのはよくある話だ。これが北米プロバスケットボール(NBA)になると、トラッシュ・トーク(Trash-talk)といって、例えば記者会見中や、試合中に、あえて汚い言葉を使って相手を挑発することで、心理的に揺さぶったり、調子を乱れさせるといったことが多く行われている。
そのようなトラッシュ・トークをする選手をトラッシュ・トーカー(Trash-talker)というが、“神様”と呼ばれたマイケル・ジョーダンは、その代表格だとも言われている。
差別を受ける選手はメジャーにも
野球の話に戻ろう。MLBでは(ブーイングなども含めると)ヤジは日常的に飛び交っているのだが、それでも、時々大きな問題になることがある。それは、人種差別的なものだ。
近年有名なところでは、昨年までオリックス・バファローズに所属していたアダム・ジョーンズ選手(当時)が、2017年、ボルティモア・オリオールズに所属していた時に、ボストンのフェンウェイ・パークで、ボストン・レッドソックスのファンから人種差別的なヤジを浴び、ピーナッツの袋を投げつけられたケースがある。
この一件を皮切りに、非白人の選手が次々と「自分も人種差別的なヤジや暴言、中傷などを浴びたことがある」と告白し、問題が一層大きくなっていった。その告白をした選手の中にイチロー選手(当時)も含まれていたことで、日本でも注目されたのを記憶している方もいるだろう。