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「老人を敬う」「親の面倒をみる」は今も倫理的なのか?

 ここで問うべきなのは、「老人を敬う」「親の面倒をみる」といった、かつての倫理が、果たして今も倫理的だと言えるかどうかです。

 フランスのバカロレアという試験の科目には哲学がありますが、そうした試験で「儒教の教えは、今日のような状況では、実は不道徳ではないか」といった問題をつくれば面白いと思います(笑)。というのも、親の面倒ばかりみていたのでは、子供がつくれません。国としても老人ばかりに予算を使っていては、少子化が進む一方だからです。

――『老人支配国家 日本の危機』(文春新書)という本では、「『家族』の過剰な重視が『家族』を殺す」と指摘されていましたね。

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 結婚にしても、出産にしても、「家族」に関わる選択が、日本では、とくに日本の女性にとっては、あまりに重すぎる“決断”となっています。フランスではもっと気軽に結婚したり、子をもったり、離婚したりします。

「家族」をあまりに完璧なものに見立てたり、「家族」ですべてを背負おうとすると、現在の日本の非婚化や少子化が示しているように、かえって「家族」を消滅させてしまうのです。

 親の面倒をみることは、道徳的に褒められているけれども、本当に褒められるべきことなのか。これから人生を営んでいく、これから社会を成り立たせていく、といった観点から、そう問い直すべきではないか。老人の一人としてそう思います(笑)。

 

●トッド氏が「家族のあり方」に着目した理由や、男女平等だった原初の人類にあり方、「安全保障よりも少子化こそ日本の真の危機」という指摘など、インタビューの全文は『週刊文春WOMAN2023創刊4周年記念号』でご覧いただけます。

photographs: Kiichi Matsumoto