教育方針は「贅沢をさせない」
有働 お子さんが男の子3人というのはどうでしたか。なんとなく、物が飛んできたり壁を蹴とばしたりというのを想像しますが。
岸田 家の壁とかドアとか結構ボコボコになっていましたね。みんなすっかり大人になったので、やっとドアを直しました、ついこの間。
有働 やっぱりそうなるのか~。政治家の息子ということで、子育てで気をつけたことはありますか。
岸田 とにかく厳しく育てたつもりです。特に意識したことは、絶対に贅沢はしない。贅沢が身につかないようにしようと。
有働 それはどうしてですか。
岸田 外からの目を意識するのもありますけど、やっぱりサバイバル能力というか。政治家を目指すかどうかは別として、人生は何が起こるかわからないから、貧しくても心豊かに生きていける人になってほしいなと思っていました。
有働 たとえば日々の食事であまり外食しないとかですか?
岸田 そうですね。あと、好き嫌いを許さない。嫌いなものでも、それを食べるまでは絶対何時間でも座って食べさせていましたね。
有働 我々のようにバブル時代を知っていると、楽しい消費生活につい流れてしまいそうですが。
岸田 何か物を買ってあげるにしても、お誕生日とクリスマスだけと決めていました。
有働 それだけ厳しくても、いや厳しかったからなのかな、壁に穴が開いたりしたのですね。
岸田 やっぱり反抗期がありましたから。そういう時には声を大きくして怒ることもありましたね。
有働 翔太郎さんからみて怖いお母さんでしたか。
翔太郎 厳しかったなというのはありました。
有働 男の子3人の反抗期っていかにも大変そう。東京にいる総理に「大変なのよ」と電話することはなかったのですか。
岸田 なかったです。
有働 強い! 裕子さん、お会いするまでクールというか、はかなそうなイメージだったのですが。
岸田 私がですか?
有働 はい。お話を伺ってみると熱くてたくましくて、意外な感じがしています。
岸田 中学1年から大学1年までずっと寮生活をしていたおかげで、生活で自立することは身についたと思います。人をあまり頼らないというか、自分のことは自分でやるというか。だからワンオペ育児でも平気だったのかもしれないですし、主人には東京でしっかりやってきてくださいと伝えていました。
有働 そんなできた妻がいて、総理も心強かったでしょうね。
岸田 確かにそこだけ聞くと、できた奥さんみたいですね(笑)。でも、結構ケンカもするんですよ。
有働 えー、それも意外! どんなことでケンカされるんですか?
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「有働由美子のマイフェアパーソン」第38回・岸田裕子総理夫人「家庭では『聞く力』はないです」の全文は、「文藝春秋」2022年3月号および、「文藝春秋 電子版」に掲載されています。
家庭では「聞く力」はないです