財産開示手続の無視・虚偽の報告は、刑事罰が科される
カネの回収の目途も立たぬまま窪田氏の逃げ切りか、というとこのままでは終わりそうもない。ある弁護士はこう解説する。
「2020年4月1日から施行された改正民事執行法により、財産開示手続を無視して出頭しなかったり、虚偽の報告をした場合の刑罰が重くなりました。民事執行法213条1項5号・6号によると、6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金という刑事罰が科されます。最終的に窪田さんが応じなかった場合は、これに当てはまる可能性が高いです」
これら競走馬を巡る一連のトラブルに関して、当事者である三崎氏へ電話取材を申し込むと、以下の返答があった。
「そういった事実もありますが、窪田さんにはすごくお世話になったので、取材に対してとやかく言うつもりはありません。ただ、この件に関しては、全ての競走馬が窪田さんのお父上である芳郎氏の名義になっていることはとても遺憾です。芳郎氏は有名な馬主さんですから、何か返答があると思って内容証明も送っていますが、一向に連絡などは返ってこない。憤りを感じます」
「三崎くんとは揉めてないし、今も仲良くさせて貰ってます」
金銭トラブルを認めた三崎氏に対し、窪田氏とその父親はなんと応えるか。窪田氏の携帯電話を鳴らした。
「本件は弁護士同士で話しているので、特にコメントすることはないです。ただ三崎くんとは揉めてないし、今も仲良くさせてもらってます」
息子から馬の名義を“譲って”もらった芳郎氏の自宅を訪ねたところ、夫人と思しき女性が玄関口で対応したが、本人の体調が悪いのでコメントできないとのことだった。
金銭トラブルで逃げ馬が有利になることはあってはならない――と記事を締めくくろうとした直後、事態が急転する。2月20日、記者の携帯に窪田氏から「解決した」と着信が入ったのだ。
「解決としてもらいました」!?
「今日、うちの弁護士と先方の弁護士で話をしました。三崎くんと僕の間でボタンの掛け違いがあって、僕のところに書面が届いておらず、目を通せなかったことが悪いんだけどね。それでも向こうの納得いく金額を払って、解決としてもらいました」
どういうことか。三崎氏に電話で確認をすると「窪田さんがうちの代理人の弁護士事務所に来られて、弁護士の目の前で入金作業をしたと聞きました。入金確認は明日になるようです」と回答した。
そして翌21日、三崎氏にあらためて昨日の事態について説明を求めると、晴々とした声でこう答えた。
「昨日お話ししたように、窪田さんご本人が僕とファビウスの代理人の事務所にいらっしゃって、弁護士さんの預り金口座に1億4500万円を送金し、本日着金を確認しました」
三崎氏側の弁護士が引き取る。
「窪田氏からの回収金額はこれまでの差し押えとあわせて、元金の1億5500万円を超える金額を回収しています。ですが、遅延損害金がかなりの金額になっているため、法律上はいまだ900万円強の支払い義務が残っている状態です」
窪田氏が胸を張る「解決」はいまだ遠いようなのだが、迷惑を被った三崎氏はそれなりに納得しているようなのだ。
「確かに法律的にはまだ900万円ほどの支払いが残っていることになるんですが、先に申し上げたように窪田さんにはお世話になってきました。だから、債権譲渡したファビウス社に残金に関しては不問に付すよう掛けあっているところです」
文春オンラインはなんだか当て馬にされたようなのである。
(追記:本記事公開1時間半後の21時過ぎ、ファビウスの担当弁護士から連絡があった。「20日にこちら側から1億4500万円の金額を提示し、窪田氏にお支払いをして頂いてます。その着金をもって、ファビウス側は解決と認識しております。なので本件は解決済みです」)