古田 打つでしょうね。昨年のホームランが56本なので、野球ファンの、彼に対するホームランのハードルは、50本くらいになっているかもしれません。とはいえ、ホームランを50本も打つのは、そうできることではありません。僕の予想では30本から40本くらいだと思いますし、それくらいの数字で見てあげないと、かわいそうな気がします。
上田 それくらいの数字で十分なんですけどね。
古田 打点についても、100打点でも十分なのに、134打点ともなると、多くのファンがさらなる数字を期待してしまいます。
村上選手と山川選手だけがホームランを量産できた理由
上田 昨年の村上選手は、プロ入りして何年か経って慣れてきて、読みもよくなってきたってことなんですか。
古田 完全にそうですね。昨年の日本シリーズの第1戦、8回裏にオリックス(オリックス・バファローズ)の平野(佳寿)投手からホームランを打ちましたが、あのときはフルカウントからのフォークボールを狙いました。おそらく相手がフルカウントでまともに勝負しにこないだろうと読んだのでしょう。しかも、平野投手はフォークボールを得意にしているにもかかわらず、その球を狙い打ちするというのが、彼の次元が違うところでしょう。昔の村上君であれば、ストレート狙いで空振りか、セカンドゴロです。
昨年のボールは、少し飛ばないボールを使っていたので、多くの選手がホームランやヒットが出にくいと言っていたのに、なぜか村上君と西武(埼玉西武ライオンズ)の山川(穂高)君だけがホームランを量産しました。
上田 それって、村上選手と山川選手は飛ばないボールでも関係ないってことですか。
古田 もちろん、彼らも以前より飛ばなくなっていると思っていると思いますが、ピッチャーが勝負するかどうかの違いが影響しています。
飛ばないボールと使うと防御率が上がる
上田 どういうことですか?
古田 もし、飛ぶボールであれば、ピッチャーはできるだけホームランバッターとの勝負は避けようとしますよね。
上田 なるほど。
古田 バットにちょっとこすっただけでスタンドに入ってしまう状況で投げるのと、ボールが飛びにくいから大丈夫だろうと思いながら投げるのでは、かなり違いが出てきます。以前、マー君(田中将大)やダルビッシュ(有)が防御率1点台を出したときも、飛ばないボールが使われていました。
あのとき(2011年)は、おかわり君(中村剛也)だけがホームランを48本も打っていて、なんで彼だけ関係ないんだって言われていました。でも全体でいうと、打率は下がり、防御率が上がっています。