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 棋士の対局は1局で体重が2~3キロ減ることもあるほど過酷なもの。最近の私、順位戦後に体重を測ったらちょうど2キロ減っていて驚いた。

 減量中だしちょうど良い、と喜んだのもつかの間、数日で元に戻ってしまうのだが……脳を使うとカロリーを消費するのは間違いないようだ。

「車で駅まで送るよ」「いえ、近いので歩きます」

 閑話休題。そんな競技だけに、日々の体力作りは大事である。棋士の場合はジョギングをする人が多いようだ。やはり自分のペースで行えるのが良く、走りながら頭の中で将棋のことも考えられる。これが激しいスポーツや球技では、相手に迷惑が掛かってしまうことだろう。

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 藤井竜王は散歩やラジオ体操という、何ともオーソドックスな運動をしているようだ。

 そういえば藤井竜王が正月に私の研究室に寄った際、こんなやり取りをした。

「車で駅まで送るよ」

「いえ、近いので歩きます」

「本当に大丈夫?」

「歩きたいので」

 師匠といると堅苦しいとか、何か敬遠されてないかと心配になったが、本当に歩きたかったのだろう。多分……。

20歳になってからも快進撃を続ける藤井聡太竜王・名人 ©文藝春秋

体力作りは大事

 運動のチャンスは意外と近くにあるもの。最近の私は駅のエスカレーターを使わず、極力歩くようにしている。

 遠征先のホテルでもチャンスは逃さない。

「お部屋は8階でございます」

「このホテルの非常階段は歩けますか?」

「歩けますが……」

 階段に出る扉が施錠されていないことが前提だが、上階の部屋から1階のフロントまでよく歩く。デパートのように開放的な作りだと、なお嬉しいものだ。

 体力作りは大事だが、忘れてはいけないのは脳のスタミナ。これはいつか、ジックリ考察したいテーマである。

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 このエッセイは『師匠はつらいよ 藤井聡太のいる日常』(文藝春秋)に収録されています。週刊文春連載を待望の単行本化。藤井聡太とのエピソード満載、先崎学九段との対談「藤井聡太と羽生善治」も特別収録して好評発売中です。

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