「そんなものはない。ないものをあるかの如く言って、人の弱みにつけこむ奴は、人間の道義として許せないと、こういう立場なんです。だから完膚なきまでに叩きのめすという立場。微塵もこの世に生かしてはおけないというのが私の立場です」
発言の内容はブレていない。矛先はオカルトに心惹かれる一般人にも向けられる。気功のパフォーマンスを披露する男性を見た後の言葉は次のようなものだった。
「もう一つイカンのはね、一般の人たちがそういうこと(派手なパフォーマンス)をする人をすごい人だ、尊敬できるんだと思う一般人の頭の悪さが非常に悪いと思うんですよ。超能力を見せるからこの人はすごい人なんだ、空中浮遊できる人だから尊敬できるんだ。違うんですよ。愛を説く優しさこそ尊敬せないかんはずやのに、なぜそこに霊やとか地縛霊やとか何でそんなもの入れるかと。その人本人の慈愛で説き伏せればいいじゃないですか」
「空中浮遊できる人」とは、むろん麻原彰晃のことを指す。麻原は「空中浮遊できる超能力者」であることを謳って、多くの人の耳目を集めていた。上岡は、このようにメディアを利用しようとする「自称・霊能者」に番組の中で釘を刺していた。
「ダマされたらアカンですよ!」
「霊能者とか自称する奴は面の皮が厚くてね、どんなに番組で叩かれてもね、次、家に帰ったらね、『テレビでおなじみの』とか『“上岡龍太郎のズバリ!”に出演した』とか宣伝に使うんです。みなさんは禁止します」
さまざまな主張が飛び交う中、番組はエンディングに向かう。上岡はカメラに向かってこのように語って締めくくった。
「この番組としては、テレビをご覧のあなたに判断を委ねるよりないという、これが一番マスコミ的な立場なんですかね。でも、ないんですよ。ダマされたらアカンですよ!」
『探偵!ナイトスクープ』での「いないと断定して終わるのがテレビです」を地でいくような言葉だった。
その後、オウム真理教事件を契機にテレビでのオカルトブームは下火になるが、上岡龍太郎が00年に引退してテレビから姿を消した後も、オカルトブームはスピリチュアルブームに名を変えて続いていった。00年代には「信じるか信じないかはあなた次第」の決め台詞とともに都市伝説ブームが起こっている。
オカルトは根強い。現在は心霊動画が花盛りだ。心霊動画を紹介するという体で、テレビはオカルト番組を流すようになった。オカルトめいた陰謀論が跋扈し、霊感商法は相変わらず被害者を出し続けている。もう上岡の言葉を聞くことができない私たちは、それぞれが「ダマされたらアカンですよ!」と言い続ける必要があるだろう。