元タレントの上岡龍太郎が5月19日に亡くなった。81歳だった。追悼記事や追悼番組が数多く企画される中で、流暢な話芸や舌鋒鋭い毒舌とともにクローズアップされたのが上岡の「オカルト嫌い」という一面だった。

 上岡が自ら語っていた武勇伝的なエピソードとしては、占い師に「私は今からあなたを素手で殴るか灰皿で殴るか、どっちで殴ると思う?」と尋ねたところ、「あなたはそういうことをする人ではありません」と答えたので「そういうことをする人じゃ!」と殴ったというものがある(『いろもん』00年3月30日)。

 また、占い師のスカートをめくって「今日ここへ来たらめくられるっちゅうのがわからんか?」と言ったところ「わかってました」と答えたので顔にペケを描いたというエピソードも語られている(『鶴瓶上岡パペポTV』94年6月10日)。ただし、このような話は芸人特有の誇張された話の可能性がある。上岡本人も引退前最後のテレビ出演となった上記の『いろもん』でそう話していた。

ADVERTISEMENT

 とはいえ、上岡のオカルト嫌いは本物だった。なぜ上岡はメディアでオカルトを嫌悪する発言を繰り返したのだろうか。実際の発言をもとに考えてみたい。

「ものすごく危険なテレビですよ」

 上岡のオカルト嫌いが表れた、もっとも有名なエピソードが『探偵!ナイトスクープ』のいわゆる「上岡局長激怒事件」だろう(94年4月29日)。「恐怖の幽霊下宿」という依頼で、霊媒師を呼んで霊が実在するかどうかを聞いたり、探偵の桂小枝が除霊師や霊媒師に扮してふざけたりするVTRを見た上岡は激怒。このように発言した。

©文藝春秋

「ああいうのをテレビに出すというのは非常に危険なんですよね。除霊師という連中ね。あんなんをね、テレビに出すことによって彼らはね、市民権を得たとか認知されたとか、勘違いするでしょ。これを作ったディレクターは何をどう結論づけようとしているわけですか。やっぱりお化けはいてるというふうにしたいわけですか?」

 桂小枝が「そんなんどうでもええと思うんですけど。ただ面白かったらええというやつだと」と返答すると上岡はヒートアップしていく。

「いや、だからテレビのそれが一番僕はイカン。面白かったらいいわけやなくて、面白くてもそれによって何らかの影響力を与えるということを常々考えとかないかんわけですよ。これをどういう結論……これ、ディレクター誰?」

 慌てて説明に現れた松本修プロデューサー(当時)に対しても、上岡の怒りは収まらない。