「姿勢の崩れ」が最初の大きな原因。その結果として、ひざの痛みがあり、骨や筋肉、関節、神経といったからだを動かす器官の障害(通称・ロコモ)に波及してゆきます。こういった姿勢の崩れはパソコンやスマホの操作など前かがみの姿勢でも起きるので、昨今、リスクは年齢に関係なく誰にもあるといえるでしょう。
つまり、ひざの痛みを自覚したとき、ひざのことだけ考え、その痛みがとれたらOKと思ってはいけないわけです。原因を置き去りにしている限り、全身状態は改善せず、ひざも根本的には治らず、すぐに再発します。
ひざ痛は、からだからのアラート(警告)であり、気づいて! というサインです。「からだのゆがみ」「間違った使い方」という原因に気づき、そこに向き合うことです。
ひざの関節は人の活動において中心的な役割を担うほど大事なものだからこそ、僕らはひざ痛をきっかけに、全身の健康や、その源となる生活習慣に目を向ける。本書『100年ひざ』では、ぜひそんな意識転換をしていただけたらと思っています。
対症療法ではなく原因に向き合い改善することが重要
じつのところ、僕が「ひざバカ」になってはダメと気づけたのは、患者さんたちのおかげです。いつのころからか、さまざまな病気を治し、治療を完全に卒業していく患者さんには共通点があることに気がつきました。それはご自分の病気の原因に目を向け、それと向き合い、改める努力をされた人。つまり、病気の原因と真剣に向き合った人が、治療を卒業されていく。
戦後からの現代医療の進歩には驚きを隠せませんが、そのほとんどが対症療法です。痛いと言えば痛み止め。熱が出たら、熱を下げる薬。血圧が上がれば血圧降下の薬。すぐに症状が消えるので患者さんは喜びます。
しかし痛みには痛くなった原因がある。熱が出たことにも、血圧が上がったことにも、すべて原因があるのです。その症状だけを止めて原因を残したままにすれば、その症状はまたすぐに再発します。そんな対症療法を続けていてはダメです。
新潟大学名誉教授を務められた、免疫学の権威である故・安保徹先生がよく言われていました。「人のからだは間違わない」と。熱が出るときは、からだが間違えて熱を出したのではないのです。熱が出た原因があります。それに向き合わないで、石油からつくったお薬で簡単に熱を下げてしまう対症療法には問題があります。
医療は、患者さんが病気と向き合うのをサポートすることはできますが、治療の主体者は患者さん自身です。
最近の患者さんの中には、「何でもいいから早く症状だけをとって」と考える人が多くなっている気がします。対症療法はそれに対して、すぐに答えをくれますが、再発します。そろそろ、「原因」に目を向け、改善することを始めませんか?
僕は、ひざ痛が起きた原因を見つけるサポートと、それを乗り越える方法を提案します。これまで患者さんたちから教わった「100年ひざ」のつくり方、守り方をお伝えしますが、それを実践するのは、みなさん自身です。