俳句、作ってきたんです
有働 夏井さんのYouTubeを拝見していたら、「自分でも出来るかも」と思って、実は今日、俳句を作ってきたんです。
夏井 そんな勇気のある人だったとは。
有働 確かに『プレバト!!』収録終わりで、エンジンの暖まった夏井先生の前で詠むのは度胸が……。
夏井 いま絶好調ですよ。赤ペンは持ってないけれど、どうぞ。
有働 「五月晴独身女と犬二匹」。
夏井 おー。ちゃんと俳句になっていますね。番組だったら「才能アリ」の70点。
有働 ヤッター! どの辺が良かったでしょうか(笑)。
夏井 「五月晴」という季語があり、残り12音で言葉の組み合わせを考えればいいという基本型ができている。「独身女と犬二匹」と自身の体験を隠さずに書く姿勢も正しい手順です。この作り方だと、自分の気持ちを季語に託して、「五月晴」を選んだのでしょう?
有働 はい。朝、五月晴で、みんなは家族で出かけている中、私は1人で犬といるなぁ……という、五月晴に似つかわしくない、寂しげな我が家を表現してみました。
夏井 なるほど。でもこの句だけ読んだら、寂しいというより、「五月晴」で自己肯定しているようにも読めますね。さらにここから腕を上げると、「独身女」と書かなくても「もしかしてこの人、一人暮らしじゃないかしら」って、想像させる句が作れるようになります。
有働 そうか。そのままですものね。どう言い換えたらいいですか?
夏井 それを工夫するのが、俳句の一番楽しい作業です。
有働 すぐ「答え」を教えてもらいたくなってしまう(笑)。
夏井 みんな「添削してください」って言うけど、一番楽しい作業を人に聞いて、丸をもらって何が楽しい? 有働さんの句は「独身女」と言わないで、真ん中の7音でどう勝負するか。その7音のパズルだと思えば、より楽しくなります。
有働 なるほど。学生時代は、国語の授業で松尾芭蕉や正岡子規の俳句をテストのために覚えさせられた記憶はあるのですが、実際に俳句を詠む授業はありましたっけ?
夏井 いまは学習指導要領に創作の項目がありますが、有働さんの時代は鑑賞主体で、詠んでいなかったと思います。学校で先人たちの素晴らしい句を学ぶだけだったので、子供たちは「俳句は自分たちとは縁遠い世界」と、無意識のうちに思ってしまったかもしれません。
有働 夏井さんの番組がなければ、私も学生時代以来、俳句に触れずに死んでいったかも。
夏井 一句でも出来て良かった。
有働 はい。これを辞世の句にしようかな。
夏井 いやいや、辞世の句にするには、まだ70点ですから(笑)。
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夏井氏と有働氏の対談「梅沢のおっちゃんとケンカし続けて11年」全文は、「文藝春秋 電子版」に掲載されています。
全文(8000字)では、俳句が敬遠された時代のエピソードから、再婚のきっかけまで語っています。