ガチガチの一夫一婦制は日本の風土にあまり合っていない
――『光る君へ』の中で、大石さんが最も平安時代的だなと感じるカップルは?
大石 まひろの弟・惟規(高杉真宙)の乳母だったいと(信川清順)と、その恋人の福丸(勢登健雄)です。いとは、まひろの父・為時とも男女の関係があったのですが、為時が越前に行っている間に、福丸とくっついて、為時が帰ってきても別れないのです。為時もそれを許していますし、福丸には他にも妻がいて、そちらと掛け持ちなのですよ。千年前だな~、本当にプリミティブだな~と思いませんか? 実に根源的でパワフルでステキです。
――「姫様を守るために独身でいる」と言っていた従者の乙丸も、越前から彼女のきぬ(蔵下穂波)を連れて帰ってきて、急に家族が増えましたよね。
大石 平安時代は、そういう欲望をみんなが普通に認め合っている世の中だったのでしょう。本来人間はそういう動物なんじゃないでしょうか。現代だって研究によれば男女の仲は4年が限界だと聞いたことがあります。人としての興味も性への興味も4年。4年周期で相手を替えていくのが一番健康的で生き生きと暮らせるそうですよ。
人間はそういう生き物なのに、明治政府が国民を管理するためにキリスト教的一夫一婦制を採用し、配偶者以外によそ見することが、ものすごい罪悪になってきました。
個人的には、ガチガチの一夫一婦制は日本の風土にあまり合っていないと思います。しかも『週刊文春』が不倫を暴き始めてから、恐ろしい時代になりました。まあ『週刊文春』が暴くのは勝手だとしても、その後のキャンセルカルチャーはどうなのでしょうか。文春に乗せられる人々にこそ問題があると思います。ちょっと婚外の恋をしただけで、生涯をかけた仕事を失わせるようなやり方は、おかしくないですか。
本当は、平安時代のような性的に奔放な生き方を人間のDNAは望んでいるはずです。今はそれを封印しているから、「こっちが我慢しているのにいい思いしやがって」と、ヒステリックに不倫を叩く人が増えているのかもしれません。「もっとみんな自分を解放しておおらかになればいいのに」と『光る君へ』の脚本を書きながら、時々思うんですよね。