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――ホストをはじめたときにルールも作ったそうですね。

城咲 外で二人きりで会わない。お客さんを抱かない。同伴は必ず後輩を連れて行くとか。そしたら男女の雰囲気にならないですよ。アフターも1対1でいかないし、行ったところでプラスないですから。

 あと、自分が魅力を感じないホスト、逆に魅力を感じるホストもノートに書き出して自分はどこのポジションにいけばいいか考えて。ルールがあって助かりましたね。やっぱり誘惑も多いんですよ。お金ちらつかせて一回ご飯行こう、買い物行こう。次第に今度私のためにお店休んでとか、みんなやられてるんですよ……! それを見たときにカッコ悪い~、主導権もってかれて、そうならないためには外で会わなきゃいいじゃんってね。

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 あとは、中身がないから一生懸命虚勢張って、日焼けして、自分に見合わないアクセサリーつけて、足組んで偉そうにタバコ吸いながら接客しても、誰も対価払わないよね。次に繋がらないよねって思いながら自分ができることをしてました。

 

「偏屈なお客」が満面の笑みになるのが一番楽しい

――お店の開店4時間半前から名刺配りも徹底されていたそうですね。

城咲 僕がホストを始めたことなんか誰も知らないし、今みたいにフリーで店に来る時代じゃなかったんですよ。すごく陰湿なイメージがあって反社に近い、ていうか、お前反社じゃん! ってホストもいたし。自分でお客さんを見つけて、たとえばお客さんが12時にきて2時間で帰ったらそこから僕、営業行きましたからね。

――城咲さんの接客、トーク力はバーテンダーの時代から養われたのか。元々お話しするのが上手だったのでしょうか。

城咲 話が上手か下手かっていうと上手くはないんですよ。でも、なんとか人を楽しませようって必死でした。親父の影響もあるんですけど、親父の店がたまに宴会場になることもあって、子どもの頃から手伝いもしていたんです。普段職人として気難しい親父が勧められるままお酒も飲んでいる姿や、真剣に人を楽しませようとしている様子も見ていて。親父に「お前な、世の中にはいっぱい中華屋さんあるだろ。板橋の大山で、駅から遠いのにわざわざ歩いて通ってくれるのは、そこに何かがないといけないし、俺は誰よりも美味しいものを作る」ってずっと聞いていたんですよね。

 

 だから、歌舞伎町の中で何千店舗もある中で、城咲仁じゃなきゃダメだって思ってもらう。相手を喜ばせる。「あの人は気難しいお客さん」だって同僚が敬遠しても、そもそも行く場所が無いからホストクラブに来る人が大半なんです。昼間楽しく生きて、誰とでも意思疎通が取れるような人はあまりホストには来ない。そこで俺らは働いてるのに何言ってるの? って。ややこしいお客さんが帰る頃には満面の笑みで「仁くん、また来るね」って言わせたときが一番楽しいんですよ。偏屈だったお客さんが気づいたら「仁くん、仁くん」って言うようになってて、ホストクラブの中だけだけど人間関係ができてる。そこから対価がついてくる。

 よく、他のホストさんの相談に乗ってると、順番飛ばすんですよね。仕事できないこと端折って売り上げばかり求めるんで。