カナダ企業からの買収提案に揺れるセブン&アイ・ホールディングス(東京都千代田区)の井阪隆一社長(67)が「週刊文春」の直撃取材に応じ、巨額の買収提案の受け止め方や新たな経営戦略の狙いなどについて語った。

セブン&アイHDの井阪社長 ©時事通信社

来年2月期の連結純利益は前期比27%減

 セブン&アイHDは今年8月、カナダのコンビニ大手「アリマンタシォン・クシュタール」からの買収提案を受けたことを公表した。ただ、買収価格は1株あたり14.86ドルだったため、「(企業価値を)著しく過小評価している」などと反発。すると、クシュタールは9月中旬、1株あたり18.19ドルで買い取る新たな提案を行った。買収総額は約6兆円から7兆円規模に膨らんだことになり、株主の利益を踏まえると、クシュタールからの買収提案に反対することが難しくなりかねない。

 これに対し、セブン&アイHDの井阪社長は10月10日、決算説明会で新たな経営方針を表明した。経営資源を主力のコンビニ事業に集中させる一方、イトーヨーカ堂などのスーパー事業を中間持株会社「ヨーク・ホールディングス」に集約させ、社名も来年5月に「セブン-イレブン・コーポレーション」に変更する旨を発表した。

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「セブン&アイHDとしては、自力で株価を引き上げることで、株主の理解を得たい考えと見られます。ただ、10日に発表した来年2月期の連結純利益は、前期比27%減の1630億円になる見通し。経営資源を集中させるとしているコンビニ事業も業績は芳しくはなく、クシュタールによる買収提案も予断を許しません」(経済部記者)

M&Aを重ねてきたクシュタール ©時事通信社

「地産地消とか色んなことをやってきましたから」

 果たして、セブン&アイHDの井阪社長は自社を取り巻く厳しい経営環境をどう受け止めているのか。10月13日、本人に話を聞いた。

――クシュタールの買収提案の件について。企業方針の違いなどはどのように受け止めている?

「流通業ってそれぞれの国と地域でそれぞれの価値をつくっていますので、本当にクシュタールさんがテイクオーバー(買収)した後に、そういうことの優先順位を考えてもらえるかということもすごく重要な要素だと思うんですね。地産地消とか色んなことをやってきましたから。そういったことまで本当にお考え頂けるかということが、一つ懸念にはありますよね。将来打ち合わせていかないといけないんだろうとは思っていますけどね」