出雲街道の町並みは、そんな最初期の津山駅で降り立った人々が中心市街地への往来で通る道筋。そのため、西洋建築が生まれるなど近代の息吹と江戸時代の息吹が交差したような町並みが形成されたのだ。
なお、現在の津山駅は1923年に開業した。それに合わせて初代の津山駅は津山口駅に名を変えて、いまは小さな無人駅として営業を続けている。
そして、津山の町には、近代と近世の入り混じった町並みだけでなく、もっと近世の比率が高い町並みも残っている。
アーケードに戻って東に向かうと…
再びアーケードを元に戻って東に歩き、京町交差点を今度は東へ。左手に聳える津山城址を見上げながら20分ほど歩いて吉井川支流の宮川を渡ると、「城東町並み保存地区」に出る。
こちらも出雲街道であるのは同じだが、江戸時代初期から形成が進んだ商人町の面影がほぼ完全に残っている。西洋建築の類いはまったくなく、どこを見渡してもまったくの江戸ワールド。宮川のほとりから東の橋まで、だいたい1kmほども続いている。
観光客の数で言えば、城西よりも城東の方が多いくらいだ。確かに、城西は江戸時代から昭和までが混在している町並みだったが、城東は完全なる江戸ワールドなのだから、観光地としては魅力が大きいのだろう。
ただ、個人的には、町が歩んできた歴史が重層的に感じられる城西のような町並みのほうが歩いて楽しい。どんな町が歩いて楽しめるのかは、人それぞれなのである。
駅前から、吉井川を渡った先の目抜き通りの奥には津山城。町の中心は、まさにその一帯だ。そして、この南北の軸を中心にして、東へ西へ出雲街道。中心部ではアーケードと天満屋、端に離れれば昔ながらの町並みが残る。
そこまで足を伸ばさなかったが、少し中心から外れた国道は、よくあるロードサイドの風景が広がっているにちがいない。津山という町は、そうした江戸時代から令和までの都市の成り立ちが、すべて体感できる町なのである。