ユニクロが合わなかった理由
横田 アルバイトでは良かったのに、なぜなんですかね。
松本 働いてみて思ったのは、結局僕はユニクロには合わなかったということです。全国に800店舗もあるような大企業ですから、どうしてもマネジメントの仕方がマニュアル至上主義になる。それを受け入れられる人もいますが、僕は受け入れられなかった。あらゆる出来事の最適解が既にマニュアル化されているんです。これが起きたらこうする、というのが全部決まっている。結局、ユニクロで働くということは、そのマニュアルを頭に叩きこんで、いかに早く効率よくやるかっていうことに尽きるんです。
横田 そうですね。
松本 ユニクロの価値観としては、マニュアルを押さえたうえで効率よく工夫し、いかに早く問題を解決するかが重要です。でも僕は、その勝負に乗れなかった。モチベーションをもってそこに向かえないので、次第になんで自分はここにいるんだろう、時間の無駄ではないかと思えてきちゃったんです。
休憩時間に「マニュアル動画を見ておけ」
横田 マニュアルはほんとうに多い。たとえば新商品だったジョガーパンツが発売された時などに、お客様にどう商品を説明するか、売り込みポイントは何かといった動画があって、休憩時間に見ておけと言われたりする。それじゃ休憩時間じゃないじゃないかと思いますけど。
松本 そうそう(笑)。ここをお客様にアピールしてとか。
横田 畳み方はこうでとか。ユニクロが力を入れている新商品が出てきたら必ずといっていいほどありますね。
松本 ヒートテックなども毎年新しい機能が追加されるので、そのたびに新しいマニュアルが来ます。
横田 社員は、今でもユニクロ23箇条(経営理念を箇条書きにしたもの)を覚えなきゃいけないんですか。
松本 暗誦できるまで覚えて、口頭で店長にテストしてもらいます。
横田 まだ覚えてますか?
松本 辞めて1年以上になるので、すっかり忘れました(笑)。覚えるのは他にもいろいろあるんです。FRウェイ(FAST RETAILING WAY 〈FRグループ企業理念〉)とか、ビジョンとかステイトメントとか。